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第5話

塩の君が甘くなる時
あの後。

浮かない気持ちを引きずったまま、今は4時限目の体育。

「はい!そこ!ちゃんと守って!」

自分は試合にも出ないくせに、ただ口だけの教師に無性に腹が立った。

しかもバスケ…。
大の苦手スポーツ。

隣のコートで男子も白熱した試合を繰り広げている。

…玲於も。

「玲於ー!いいぞっ!シュート!」

運動神経抜群の玲於は、何のスポーツでもそつなくこなしてしまうところがある。

今私も試合に出ているけど、下っ腹の痛みが酷くなってもう苦しいにも程がある。

オールコートを使っての試合中、全力で走って一生懸命ボールに手を伸ばしている中、私の体は限界のラインまできていた。

…あ。もう無理。

そう思ったのと、体が言う事を聞かなくなったのは、ほぼ同じタイミングだった。


ドサッ。

「え、有島さん⁉︎」

「美恋菜っ⁉︎ちょ、誰か先生早く‼︎」

次第に薄れていく意識の中で、クラスメイトが慌てふためいた様子で必死に私を支えてくれているのが分かる。

すると。

「っ、美恋菜⁉︎美恋菜っ‼︎しっかりしろって!」

隣のコートからわざわざ駆け寄ってきたその男子生徒は、非常に困惑した表情をしているようにも見えた。

その瞬間、ふわっと自分の身体が持ち上げられたような感覚がして。




それからは覚えていない。

「ん…?」

目を覚ますと、白い天井が目に入った。
保健室か。

チラリと視線を横に移すと…。

「…、え、玲於っ⁉︎なんでここに!」

玲於に寝顔を見られた恥ずかしさと、隣で寄り添ってくれていたことの嬉しさ、色々な感情がないまぜになって思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。

「ごちゃごちゃうっせぇなー。お前あさから変だっただろ?なんで言わないんだよ!」

それは心配してくれている表情そのもだった。
思わず少しだけ口元が緩む。

「え、だって!玲於に心配かけたくないしっ…」

すると玲於ははぁーとため息をついた。

「心配かけろよ。恥ずかしいのは分かるけどさ、言えって。…女の子の日なんだろ?」

恥ずかしくて俯きながら頷く。
よく考えてみれば、ずっとお腹があったかかった。玲於はきっと、悟ってくれてたんだ。

「無理すんな。まだ痛むか?」

まるで人が変わってしまったみたい。
今日の玲於は、甘い。

「うん…。 ごめんね、今日の朝。」

私が素直に謝ると、玲於も謝ってきた。

「俺こそごめん。」

たった一言。それだけなのに。
その一言は、私の心を甘く溶かした。

素直に謝るって、いいことだ。

それからも玲於は、私の痛みがほとんどなくなるまで、ずっと私のお腹を撫でてくれた。

そして、照れる玲於を無理やり促し、仲直りの指切りげんまんをした。