第14話

帰り道
3,163
2019/03/23 12:27
紫耀「…あなた、よかったやん」






『……ん、?』





紫耀「会えたやんか。な!」





『あぁ、…うんッ』




紫耀は、 長年の想いも叶うやん。なんて思っているのだろうか。





でもね、




廉には、花蓮ちゃんっていう彼女が出来ちゃったんだ。





そうでしょ…?





だからもう、叶わない。







廉「…はよ行くで」






思いっきり引っ張られる腕。





何度、廉に振り回されるのか。




ほんとに嫌になる。








廊下には、ほぼ生徒は居なくて、




下駄箱に行けば、いつも混み混みなのにすっからかん。









靴を履き、廉の隣でまた歩き出す。








でも、さっきから廉は、無言。






『ねぇ、廉…』




廉「…」




『廉ってば…ッ、!』




廉「なんやねん 、」






『なんで喋らんの。』






廉「……」







ほらまた。





無言になっちゃった。








と思えば、意外な言葉がふってきた。








廉「紫耀ってやつと、どんな関係やねん」




『は…?』






廉「なんで呼び捨てなん?
昔から、俺以外は君つけとったやん。」







『いや、…なんか、……紫耀って間違って呼んじゃった時があって、その時から、もう呼び捨てでええよって…』





廉「なに間違ったって。意味わからん。」






『み、皆が紫耀って呼ぶから…!
女子からモテモテだし 、』






廉「皆呼んどるんか。」





『あ、皆って、いうか…
紫耀の前では、…私だけ、呼び捨て…』






廉「は?」






さっきから曇った顔ばかりの廉が、



さらに眉間にシワを寄せて、問い詰めてくる。








廉「なに、お前アイツのこと好きなん?両思いか」







『違うから…ッ!!!』







そんな誤解、廉にだけはさせたくない。





『私は、紫耀のこと好きじゃないよ?
紫耀は、恋愛が得意分野で、私の話し相手になってくれるし、廉の話も聞いてくれるし、廉と同じ関西弁で…
廉を思い出せたから…ッ。』







廉「俺…?」









廉が好きだから。






ずっとずっと、廉が好きだと誰にも言えなかったから。







紫耀が唯一、関西弁で。


不安だらけの私に寄り添ってくれて。





紫耀にだけは、初めて何もかもさらけ出せた。




悩みも、嬉しかった事も、廉との昔の思い出の話も、




紫耀だから、変な親近感湧いて、

気持ちをさらけ出せた。







廉が好き。



そう伝えられたら、どんなにいい事か。







せっかく会えて、




ちょっと期待も寄せて、





嬉しかったのに。





これから徐々に、頑張ろうって決めたのに。








廉は彼女ができた。







この気持ちはもう、伝えられなくなった。










『…廉がいないと、ダメだから、私…ッ』






『紫耀が関西弁で、不安だった私に寄り添ってくれて。大阪も廉も思い出せて、落ち着けたから。』





『…紫耀とはあんな感じだったけど、好きとかそんなんじゃ、なくて…ッ』






廉「もぉええわ。、わかった。」







廉「ん ~、ごめんな?なんか。」





やっと晴れ晴れとした顔にってくれたんだ。






『別に、いいけど』








でも一つ、





『こちらからも、聞きたいことがあって。』






廉「なんやねん、かしこまって。」







『これからはもう、…














廉と一緒に、帰れないの…?一緒に居れない?』









あぁ …。 聞いちゃった 。









こんなこと聞いたら、



ほんとに実現してしまうのか。









女心がわからない廉だから、






そうや。帰った方がええよな。って言って、






ほんとに私の側から、いなくなってしまうのか。









でもどうしても、花蓮ちゃんへの想いを、ちゃんと聞きたいんだ。








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