そう言っていつの間にか夏なのに冷えきった手を
握って立ち上がらせてくれる彼。
あの頃と変わらない。
飛雄さんが目の前に居てくれるからか、さっき
みたいに緊張せずに話せる。
何年ぶりだろうか。
いつの間にかこんなに背が伸びてしまって、
逆にこんな僕が端から見れば子供のようだ。
いきなりさっき来た人が飛雄さんの影から
出て来て、今度は飛雄さんを壁にするように
隠れる。
ヤバいヤバい。
この人絶対先輩なのに!なのに超怖い!!
絶対コレ嫌われたな、絶対「変なやつ」って
思われてるコレ!!!(泣)
ダメだヤバい殺される!!
心臓握り潰される~!!!!!!(死なないっての☆←2回目)
やっと名乗れて、ようやっとここで少しだけ
肩の力が抜ける。
バレー部「「…………げ」」
清水先輩の言葉に、主将だという澤村さん達
バレー部全員が「やば。」みたいな顔になる。
どうやら僕がここにお邪魔したせいで貴重な
練習時間を削らせてしまっていたらしい。
バレー部「「オェース!!」」
澤村さんの一言で、部全体の意識が引き締まって
部活が再開される。
信頼し背中を見て慕う部員と、それだけの度量
を持って部をまとめる主将……!
か、カッコいい…………!!
少々無理なワガママを言ってしまったと思ったが、
先輩はそうは思ってくれずに仕事を手伝わせて
貰う事にした。
それに、入部させて貰うにあたって、僕も
先輩方はもちろん飛雄さん以外の人に言っておく
事もあるし。
清水先輩から、淡々と学年、名前、ポジション
を1人ずつ教えて貰う。
2年生は4人。
L(リベロ)の西谷夕さん。
僕と同じくらいの身長で、さっき「お前は?」
って話しかけてきた人がそうだという。
そしてWS(ウイングスパイカー)の田中龍之介さん。
坊主頭の人で、さっき3年生に怒られてた人
らしい。
あとは縁下力さんと木下さんと成田さんがいる。
そして、1年生は4人。
飛雄さんとの関係は何となく察して清水さんは
教えるのを省略したから、僕が初めましての
人は3人。
MB(ミドルブロッカー)の日向翔陽さん、
月島蛍さん、山口忠さん。
日向翔陽さんは西谷さんと同じように身長が
あまり変わらない。でも体力と身体能力が
高く、攻撃の要的な存在。
月島蛍さんは飛雄さん以上の身長の持ち主で、
的確にブロックをする冷静な人らしい。
山口忠さんはどちらかというと他の1年生に
比べて抜きん出た才能とかは見られないらしい
けど、フローター(ジャンプフローターサーブ)
を武器としてピンチサーバーで試合に出たことも
あったそう。
ドリンクを作りながら、紹介してくれた先輩
に尋ねてみる。
自分でそう言いながら、頭のなかでその試合を
フラッシュバックさせる。
鮮明に映像が浮かぶのは、烏野が負けたあの
対青葉城西の試合と、兄さんの決勝。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。