第10話

第8セット「役立たずなりの戦い方」
1,495
2020/05/11 11:49





飛雄さんに頼んでやって貰える事になった、
あの烏野の速攻。


いつも試合で最初は絶対に反応出来ないその
攻撃をキレイに僕が上げた事で、撃った日向翔陽
さん本人も澤村…さん達も驚きを隠せずにいた。











日向翔陽
日向翔陽
うおー!?止めた!?
田中龍之介
田中龍之介
は……?
菅原孝支
菅原孝支
え……目、ほぼ盲目なんだよな……?
月島蛍
月島蛍
ねぇ君。その状態でこれ何本に
見える?(答え:2)
緋錦多々良
緋錦多々良
……すみません。
どこから言われたのか分からなくて。

どこにいらっしゃいますか?


当然コートの外から言われても、僕にとっては
全く意味を成さない。

視界はただ白く霞んだ世界で、ネットを挟んだ
先にいる飛雄さんも分からない。





それでも僕は日向翔陽さんのスパイクを全て
キレイに上げて。

……久しぶりにボールに触れられた嬉しさと
場違いなテンションになってしまっている事への
羞恥で慌ててコートの外に出た。
澤村大地
澤村大地
……なぁ、緋錦、と言ったか?
緋錦多々良
緋錦多々良
は、はい
澤村大地
澤村大地
目はほとんど見えていない状態
なのに、どうしてあのスパイクを
キレイにレシーブ出来るんだ?
日向翔陽
日向翔陽
え!?お前目ぇ見えねえの!?
緋錦多々良
緋錦多々良
……耳を、鍛えました。
目はたとえ見えなくなっても、それを
悟られないくらいに、他の感覚を
研ぎ澄ませれば良い……。そう思い、
荒療治ですが聴覚を鍛えました。

今だと微かな衣擦れの音や呼吸音、
至近距離だと心音から感情も読めます



シー……ンと静まりかえるこの雰囲気。






知ってる。
僕がおかしいってこと。
異常だから、こうして静まり返って、僕の事を
悲観的な目で見る。



どんなに頑張っても、
僕は「目が見えない役立たず」な人間。
何処に居ようと、誰と居ようと、それは覆せない
事実。

決まってる。どうせ「ごめんな」って言われて
断られる。












西谷夕
西谷夕
……耳で戦うのか!すげえ!!
日向翔陽
日向翔陽
ねえ!
それってどういう鍛え方したんだ!?
オレにも教えてくれよ!
緋錦多々良
緋錦多々良
……え?
菅原孝支
菅原孝支
目が見えない代わりに聴覚を鍛えた
のか……。
簡単に出来ることじゃないな
澤村大地
澤村大地
そうだな。
結構尋常じゃない練習をこなしたん
だろうな





……驚いた。

可哀想っていう言葉以外にそう言ってくれる人、
飛雄さんの他にもいるんだ…………。











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遅くなりまして申し訳ありません!



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