ぺけたんside
俺の目から水が溢れ出した
人間で言う『涙』なのかな…
するとマサイは急に怖い顔つきで俺の肩を掴んだ
マサイといる時は本当に楽しい
それは嘘ではない
ご飯を美味しいって言ってくれる時や研究やロボットの修理をしている時、ハグしてる時
数え切れないくらい過ごした時間は、俺にとって大切な思い出だ
ちゃんと言わなきゃ
なのに、なんで言葉に出せないの?
声に出して言うだけなのに、なんで…
パチン
と痛々しい音がした
気づいたら俺はマサイのことを平手打ちで殴っていた
マサイは荷物を持って病室を出て行ってしまった
マサイが部屋を出た途端、俺は膝から崩れ落ちてしまった
また涙が溢れた
マサイにあんな風に思われてたんだ…
やっぱり俺は所詮『モノ』なんだな
俺の何もかもは作られたものばかり
今までマサイに向けていたものは全部、俺の感情じゃないんだ
寂しいのも、あったかいのも、嬉しいのも…
だったら…
俺の視界はそのままブラックアウトした
マサイside
俺は病院を出て、そのまま河原に向かった
ここはよくシルク達と来ている場所
俺はそこで石を思いっきり川にぶん投げた
ぺけに酷いことを言ってしまった
最低だ
あいつは何も悪くないのに
俺があんなこと気にしなきゃ良かった話なのに…
振り返るとシルク達がいて、気づけば俺の目からは涙が溢れていた
俺はシルク達に何もかもを話した
博士と言い合いになって倒れてしまったこと、ぺけに酷いことを言ってしまったこと
そして、ぺけのことを好きなことも…
みんなで他愛もない話をしながら病院は向かった
ちゃんとぺけの話を聞こう
それで、俺の気持ちもちゃんと伝えるんだ
そう決心して…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!