前の話
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_あなたは今どこにいますか?_
色濃く残ってる、淡い記憶。いつ思い出しても心が温かくなって、どこかキュッと胸が苦しくなる。もう一度会えたらと、何度願ったことか。忘れかけていた記憶を取り戻した時本当に泣きそうになった。同じ空の下にいるのは確かなのに、あなたがどこにいるかなんてもちろんわかりもしない。あなたに会いたい。
あなたが私のことをおぼえてる保証なんてどこにもないのにね。
(優奈)別れよ。友達の方が絶対いい。
(るい)…今のお前には何言っても無駄だよな。笑
勝手にしろよもう。
(優奈)今までありがとう。楽しかった。
(るい)おう!
これで付き合った人数6人目、振った数6人目…。誰と付き合っても、本気で好きになれない。いつもそう。この人なら本当に好きになれるかなって思って付き合っても結局その人のことは好きになれずに別れてしまう。これがいつものパターン。恋愛に全然向いてないくせに、元彼の数は友達の誰よりも多い。友達には呆れられてて「また、彼氏できたの?笑笑何人目だよ笑」みたいな感じでバカにされる。相談にも乗ってくれないし、恋の相談なんて友達にしたことない。ひとりをのぞいて。
_教室_
(れな)おっはよーーう優奈!!
(優奈)おはよ。
(れな)あ、るいくんと別れた?
(優奈)うん
(れな)るいくん結構かっこよかったのにーもったいないなあ!
れなだけは違うれなは同じ部活で私が部長れなが副部長をしている。れなは親友と言ってもいいほどだ。何でも聞いてくれて友達関係のことも恋のこともなんでも相談できる。本当に感謝してる。
れなは人を好きになれない、何人も付き合って何人も降ってきた、こんな恋を知らない私の事でも受け入れてくれた。みんなは私のことを男たらしとという。自分でも言われて当然だと思ってるから、特に何も思わない。
_私の家_
(れな)あぁ!!!この優奈泣いてる笑
(優奈)もー、アルバム勝手に見ないでよ笑
(れな)いいじゃん別に!うわーあんた全然顔変わってないね笑
(優奈)よく言われるわ笑
(れな)この写真は4歳のときの?
(優奈)そそそ、4歳、笑
(れな)なんか、この子といっつも一緒に写ってない?
(優奈)んー?どの子?
(れな)この子!!
れながある男の子に指を指す。
(優奈)…だれだっけ、これ笑
(れな)忘れたんかーい笑
(優奈)保育園の頃の記憶とかそんなもんじゃん?笑
見慣れた笑顔。愛しい笑顔。その顔を見た時胸が苦しくなった。絶対に忘れちゃいけない。忘れちゃいけないのに、記憶が曖昧で…なかなか思い出せない。この子は…、、、
(優奈)空くん…だ。
(れな)ん?
(優奈)空くん。私の初恋の子。
(れな)え、そーなの?!
(優奈)今めっちゃ思い出した、、
(れな)その子となんかあったの?
(優奈)なんだっけ…、
_その日の夜ベットの上_
空くんとの写真を眺めた。何かがあった気がするんだよね。絶対に忘れちゃいけない何かが。
…
そうだ、思い出した。あれは4歳のときの話。
私と空くんはいつも一緒にいた。おやつの時間は2人で2人席で座って隣でおやつを食べていた。とても楽しかったし嬉しかった。そして私は空くんのことが好きだった。
ある日のおやつの時間、いつものように2人で話しながらおやつを食べていると、空くんがいきなり…
(空)優奈ちゃんの好きな子だれ?
(優奈)…ひみつ。
(空)僕の好きな人はね優奈ちゃんだよ。
(優奈)?!
(空)優奈ちゃんは?僕のこと好き?
(優奈)うん…すき。
(空)じゃあ大きくなったら僕のお嫁さんになって?
(優奈)うん…!
あの時私とあなたは結婚する約束までしてたんだね。この約束は果たされることなく消えていくのかな。
でも、何故だろう、あなたとの記憶がそこで途切れてるんだ、。どの写真を見ても、あなたの写真はどこにもない。何があったか思い出せない自分が嫌になる。
思い出せない。
思い出せない…
そうだ、君は、…
転園したんだった。
つづく。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!