一頻り泣いて、やっと涙が止まってきた頃
獅音「ねぇ、君も一緒に現世へ帰ろうよ」
「えっ……?」
獅音「俺の名前は君が教えてくれたし」
獅音「俺だって現世に帰りたいし」
獅音「でも、君だけ置いて行く訳には行かない」
「でも、私名前が思い出せない」
獅音「なら思い出すまで一緒に居るから」
「ダメだよ!その間に2人とも獅音の名前忘れたら……」
獅音「大丈夫、とりあえず手がかり探しに行こう!((グイッ」
「えぇ?!」
手を捕まれ走り出す
商店街や住宅街を抜けて、林の近くで止まる
「あれ、この場所……」
獅音「見覚えある?」
「うん……確か獅音と夏祭りに行った場所……」
獅音「ここは日本の昭和辺りの時間を止めた空間なんだよ」
獅音「だから、昔から風景が変わってなければ」
獅音「現世とここの風景が一致するんだと思う」
「そうなんだ……」
獅音「何か、思い出せない?」
「えっと……」
あの時は金魚すくいして、焼きそば食べて
射的とかヨーヨー釣りもして、髪飾りは1番最後……
あの時獅音なんて言ってたっけ……
“▫▫にはひまわりが似合うよ”
そうだ、あの時名前を呼んでくれた
「確か、この髪飾りを獅音がくれた時」
「私の名前を呼んでくれたの」
「その後何が言いたそうにしてたけど……」
獅音「俺が?」
獅音「何を言おうとしてたんだ……?」
「そうだ、その時私も何か言いたかったの」
獅音「それが分かればな……」
彼の黄色のピアスが煌めいた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!