線路を歩く
獅音「怖い?」
サキ「ううん」
サキ「獅音と現世に帰れるんだもん」
サキ「鬼が出ても番人に唆されても大丈夫」
サキ「絶対に2人で現世に戻ろう」
獅音「うん」
どのくらい歩いただろう
霧がだんだん濃くなっていく
地面の雑草に足を取られてなかなか進めない
サキ「獅音……大丈夫?」
獅音「俺は大丈夫」
サキ「霧濃いね〜……」
獅音「……水音が聞こえる」
サキ「え?」
耳を澄ますと確かにジャブジャブと水音が聞こえる
三途の川が近い事を示していた
サキ「って事はこの音は鬼が船を漕ぐ音……」
獅音「近くに行って茂みに隠れてよう」
サキ「うん」
茂みから顔を覗かせる
サキ「ツノが生えてる……」
獅音「俺も来る時あの船に乗った」
サキ「私乗らなかったよ?」
獅音「サキ、もしかしたら墓地かなんかに居なかった?」
サキ「あ〜……歩いてたらなんか墓地みたいなところ着いた」
獅音「やっぱり……」
獅音「サキはあの世行きの電車の途中で乗ったんだ」
獅音「だからあの船に乗ってない」
サキ「え、ショートカットで来ちゃった感じ?」
獅音「分かりやすくいえばそうだな」
サキ「へぇ……」
水音が遠ざかる
獅音「行ったね」
サキ「私達も行く?」
獅音「うん」
川の近くに行く
獅音「船がある」
サキ「これ漕ぐ?」
獅音「でも、鬼の船とすれ違うとやばいから」
獅音「泳いでいこう」
サキ「泳いで?!」
獅音「チャンスは1回」
獅音「泳ぐなら鬼が通る時は潜ればいいし」
獅音「泳いだ方がリスクが圧倒的に少ないじゃん」
サキ「そっか……」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。