第2話

私の話
302
2021/05/16 05:07

生まれた頃から地下街にいた。


太陽なんて、見たこと無かった。



母は娼婦だった。

私を愛してくれていた。


. .
本物の父は知らなかった。


私の義父は、

ケニーと言った。



たまに家に帰ってきて、母と3人で一緒に食事をとったりするだけだった。


それでも、ケニーがすきだった。





トレーネ
お義父さん、早く帰って来ないかなぁ...
母
トレーネはお義父さんが大好きなのね。
大丈夫よ、焦らなくても
ちゃんと帰ってくるから。
その日はお義父さんが帰ってくる日だった。



お母さんと2人で、お義父さんを待っていた。





コンコン



硬い、ドアをノックする音が聞こえた。




お義父さんじゃない。


お義父さんは、ノックなんてしない。






母
...トレーネ、
...隠し倉庫に入りなさい。
いいって言うまで、出てきちゃダメよ。
思っていることは、母も同じだった様だ。


母の指示で、隠し倉庫に静かに入った。





母はドアを開けた。





男
どうも、失礼致します


挨拶をする男。


やけに丁寧な挨拶だった。




グチャッ、



と、血の飛び散る音がした。


母
ふ"ぅ"......!


切りつけられたのは母だった。


男2
男2
はははっ...、
やっとケニーにあの時の借りを返せるぜ...!
女と餓鬼が死んだって聞いたら、どんな顔するんだろうなぁ...?



あの時の借りって?


戸惑いと、

恐怖と怒り。



私も切りつけるつもりなんだ。



グサェッ


と肉を刺すような音がした。






母
ふぐぅぁ"....
母が刺されたんだ。


男
よし...、次は餓鬼だなぁ?
男2
男2
...いなくねぇか?
あんまりチンタラしてっと人が来ちまうぞ?
男
...まあ良い。
金目のものを全部かっさらって
とっととずらかるぞ。
男2
男2
ヒヒッ...
女が死んでどんな顔すんだろうなぁ...?



男達は、金品を奪って出ていった。


出ていったのを確認すると、

隠し倉庫から出て、母の方に向かった。



トレーネ
お、お母さ...お母さん。
母
ト、トレーネ...聞きなさい。

きっともうお母さんは死ぬ。

貴方は...美人だけれど......お母さんみたいに、
間違った生き方をしない様に......して、ね。

過去を...知っても......生きていける様な、
強い子に...なってね。
トレーネ
お"...お母さん...ヒグッ...
い、か......行かないでよォ...!
母
泣かないで......あ、なたは...
美しくて、強い...花なの......。泣いたら、枯れてしまうわ...
嗚呼...どうしても世界は

こんなにも残酷なのだろう。


醜くて、惨い。



絶対に、何かが、

人の幸せを奪ってしまう。


嫌いだ。

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