夜遅く…みんなと分かれて…
クミ視点
季節はまだ夏だけど、夜風が心地よく、決して過ごしにくくはない時間を大好きな仲間と一緒にいた。
時間は7時。
夕日はもう見えなくなり、あたりには星々や月が私たちのことを見守っているかのように光っている。
そして、この楽しい時間の終わりを告げるように…光っていたようにも見える…。
グィッ…
タッタッタ…
こういい、
とも、鳥ちゃん、バッちゃん、ぺいんとさんが帰路についた。
トラゾーさんとクロノアさんも続いていき、私たちも帰ろうとしていた。
ぐぅぅぅ〜
しにがみくんはそりゃもう限界だったようで、普通に2人前くらいの量を食べていましたw
ゆーて私もかなり食べたw
大盛りポテトは絶対食べなきゃw
しにがみくんと争奪戦繰り広げてたよねw
ちなみに、近くのファミレスに入った。
学生にも優しい値段のものばかりなのに、食べる量が多けりゃ、値段も弾むよねw
お会計…すごい値段いったんだけど…。
店員さんにびっくりされたよw
おかしいな…。
あちゃみさんとソーラさんはそんなに食べてなかったのに…。
私としにがみくんかなw
私も人のこと言えなかったんだなぁw
店員『ありがとうございました〜』
私たちはそんな話をしながら、
自宅へと足を進めていた。
そして大通りを抜けて、最後の暗い道。
あの一件と今日のことで正直怖い。
走ればいいんだけどさ、あの速さにしにがみくんがついてこれるとは考えにくいんだよね…失礼なんだけどさ…。
運動苦手って言ってたし…。
他愛のない会話、
ずっとこれが続けばいいのにね…。
この平和が壊れるときは、
必ず誰かが犠牲になる…。
ちょっと遅れて歩いていたあちゃみさんが姿を消していた。
そして同時に目に入ったのは、
猛スピードで走る2つの影。
やられた!
私はすぐに気づいた。
転んだとかそういうレベルじゃない。
あちゃみさんが連れ去られてる…!
でもなんでだ?
推測するに狙いはソーラさんだったはず…。
今はとにかく走って走った。
私は全力で2人に近づいた。
マイクラで鍛えた足は今も残ってる。
現実にいる人間なんて比にならないくらいの速さをもってんだから…。
そして、逃げられないように、
2人を追い抜かして、前に立った。
後ろには異変に気づいたソーラさんも来てる。というか追いついた。
私の隣にいる。
しにがみくんは多分、
もう少しかかるだろうね…。
いつものおっとりした雰囲気とは別で…。
見たこともないような怒り、殺気を放って言った言葉は、空気を凍りつけるようで。
私も味方ながら怖いと思ってしまった。
ソーラさんを狙っていた。
ソーラさんは優しい人だ。
前に言ってた。
マイクラの世界で起きたようなことがまたあったら、命を投げ出してもみんなを守るって。
あの時は守られてばかりだったからって…。
きっと、ソーラさんはあちゃみさんのことを優先するだろう。
でも、こいつらの思うままにすれば、
ソーラさんは無事では済まない…!
何か…何か手を出さなきゃ…!
待ってよソーラさん…。
ソーラさんがそっちにいったら…
無事で帰れるかわかんないんだよ?
くそ…!
こういう時に何にもできない無力さに腹が立つ…。仲間1人救えないくらい、私は弱い…。
私は拳を握りしめた。
どうしようもない怒り、後悔が心の中いっぱいにあった。
なんだろう…急に身体が重い…。
私はその場で膝をついてしまった。
立っていられないほどの強い吐き気、頭痛、目の前が歪んでる…。
こんな時に、情けない…。
でも、この感じ…どこかで…?
そうだ…。
この感じ、初めてマイクラの世界で魔法が使えた時の感覚…。
初めは身体に追いつけてなくて、1つ使うのでさえ大変だった…。
私は拳を握りしめた方の手を見た。
信じられない光景だった。
微かに手が黒い光を放っている。
マイクラの時の水晶の色…。
私は確証した。
今なら魔法が使える…。
あちゃみさんを助けて、
ここから立ち去ってしまえば…!
ソーラさんは2人に近づいた。
逃げられないように腕を掴まれている。
私が失敗すれば、ソーラさんは逃げられなくなる…。落ち着いて…狙え…。
今…!
行け私!
グィィッ…
魔法を2人の足元に飛ばして、
縄状にして、強く締め付けた。
拳を強く握り、その力をもっと強くする。
痛さと訳のわからなさできっと手を掴む力は弱まる。そこでソーラさんには抜け出してもらう!
きっとうまくいく…。
やれ!私!
魔法も魔力も小さく弱い。
私自身の力でそれをカバーしなければ長くは持たない…!
早く…早く逃げてソーラさん!!
パシンッ…!
大きく手を払った音!
ソーラさんは手を振り解いてあの2人から離れていた。
これほどまでのチャンスはない!
追いかけてきた…。
でも、甘い…!
その鎖はね、痛いだけじゃなくて重いんだよね。私が力を込めるほど、その鎖は力を強くする。
走っていくと、
こちらへ向かってくるしにがみくんが見えた
肩で息をしていて、
疲弊しているのが見て取れた。
走ってるけど、遅くない!?
いや、うちらが速いんだ…。
ソーラさんが、
しにがみ君の手を引っ張って走る。
私たちの走る速さに追いかけてる方もしにがみくんも驚きを隠せていない。
マンションまで大体500メートルほどあった道は1分程で走り切ってしまった。
流石にもう追いかけて来ないだろう。
そのままマンションに入って、
エレベーターに乗り込んだ。
あんなことがあったが、
ようやく物事の大変さを知った。
冷静になれば、恐ろしい場に着面していた。
確実に分かったのは、
また来る可能性が大。
ソーラさん狙い。
であること。
これからどうしようかな…。
実を言うと、私は結構やばい。
今喋れているのが奇跡に近い。
正直、魔力とかが存在しないこの世界で無理矢理こんなの使ったら、そりゃ、倒れそうなくらいにもなる。
マイクラの世界はあくまでもゲームだからできたんだ。現実とは訳が違う。
バタッ…
エレベーターから降りてすぐ、私は倒れた。
私はそこで意識を手放した。
to be continued…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。