いつもと変わらぬ、平凡な日々。
外から聞こえるのは、降り止むことを知らぬかのように一向に止まない雨音。
雨に濡れてゆく校庭を横目に見ながら授業を聞くのは、私、加藤リンだ。
まぁ、こういう日は神社の手伝いをしなくて済むからいいものだ。
私は巫女であり、同時に捨て子でもある。
幼い頃に母に捨てられ、現在は神社の巫女をしている今のお義母さんに拾われて生活している。
それが丁度六年前………いや、もうすぐ七年前になるか。
残り三日でやってくる私の誕生日、その日は、母に捨てられた日でもある。
だから私にとっては、誕生日という日は、私と言う存在が親から切り離された日でもあるのだ。
誰もが皆、親に祝ってもらい、プレゼントを貰う。
だが、私には、そう言う親は居ない。
今のお義母さんである巫女様は、毎日仕事で忙しく、私の世話をする時間さえなかった。
小学校に通わせてくれたことは嬉しい。
いつも私を気遣ってくれてるのも嬉しい。
だけど、いつも思うんだ。
お義母さんは、私を見るたびに、時折悲しそうに笑うんだ。
何でかなんて知らないし、一度聞いてみたけど、教えてくれなかった。
だから、聞かないことにした。
それがいつだったかなんて、今では覚えてもない。
「リンさん?どうしたの?」
ハッとして横を向くと、そこには同じクラスの同級生、チヒロとモモエが心配そうに見ていた。
どうやら授業は終わっていたらしい。
さっきまでたっていた先生の姿がとこにも無いし、時計を見ると、とっくに休み時間になってしまっている。
「チヒロ、モモエ、大丈夫だよ。平気。」
考え事をしてた……なんて言うと、心配性のモモエと、落ち込み体質のチヒロに迷惑をかけてしまう。
ここは、大丈夫っと言って紛らわせる。
「そう、ならいいけど……。」
「何かあったら言ってよ?」
二人は「大丈夫」と言う私をいつも気にかけてくれている。
私が捨てられた子供ということは、二人も知っているからだ。
あまり、二人に迷惑はかけれない。
窓の外で降る雨は、いつもより雑音に聞こえた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!