監督「頭守って!」
そう監督が叫んだと同時に、物凄い地響きがした。
そして…立っていられないほどの強い揺れが襲ってきた。
持っていた鞄で咄嗟に自分の頭を守り、丸くなる。
ガチャンという大きな音と共に悲鳴が上がった。
20秒ほど経っただろうか。
ようやく揺れが完全におさまった。
照明は全て落ち、セットは倒壊していた。
落下した機材の下敷きになったスタッフもいる。
その惨状を目の当たりにして絶句していると、目黒が走ってきた。
目黒「雪ちゃん!大丈夫!?」
「私は大丈夫。」
そういうと目黒はほっとした顔をした。
目黒「やばいね…」
「うん…」
しばらくたちすくんでいると、スタッフさんのうちの1人が声を上げた。
スタッフ「ここはまだ倒壊や落下物の危険があるので動ける人はすぐに屋上に移動してください!」
「…行くよ」
私は目黒の手を引いて階段を登って屋上に上がった。
目黒「え……………」
「これって………」
だがそこで私たちが目にしたのは…………
ビルは大きく傾き、高速道路が倒壊し、木々は薙ぎ倒されて、チラホラと黒い煙が上がる…
見慣れた街の、変わり果てた姿だった…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!