第68話

奪い、奪われ
24,109
2023/01/16 13:40





すぅぅ …… っと 、目の前が暗くなっていく。










その数秒 、まるで時間が止まったような










あなた 「 ………負け た ……… 」












頭の中でただ 、「 負けた 」という情報だけがぐるぐると渦を巻く。






…………なんで ? 負けただけ 、ただ 、凛達のチームに 、引き抜かれた、それだけなのに












あなた 「 どうしてこんなに 、悔しいの











何か胸に 、突っかかる。いつもの私じゃないみたい 。いつもの私なら 、負けただけでこんなに悔しがるなんて 、そんな事…… 。











頭の中で情報を整理していると 、凛がこちらに歩いてきている事に気がついた。















凛 「 来いよ 」












そう言って 、私の手首をガシッと掴んで立たせようとした 、が 。










あなた 「 や 、 ちょ 、 待」










凛 「 んだよ 」










あなた 「 ドリンクと タオル …… 」









まだ私には 、仕事がある。










マネージャーとして 、仕事は全うしなければならない。ので 、フィールド上にいる皆を見た。










どうやら 凛達は蜂楽くんを引き抜いたらしく 、イサギくん達と何かを話している。









その時既に 、イサギくんの目に光は灯っていなかった。









そんなイサギくんに私はゆっくりと近づいた。









私がピッチ上を歩く音だけが 、嫌にその場にこだまする。









あなた 「 イサギ 、くん 」










私がそう声をかけると 、イサギくんは地面にやっていた視線を 、ゆっくり顔を上げて私と目を合わせた。










潔 「 ………あなた










潔 「 は 、はは
ごめんな 、俺 絶対譲らないとか、言って… 」










あなた 「 あのさ。 …私 、イサギくんを待ってる 」












潔 「 …………え ? 」












あなた 「 イサギくん達が私を奪ってくれるのを 待ってるって事 。 」











あなた 「 私だけじゃなくて 、蜂楽くんもね 」













潔 「 ………… 、おう 、!! 」















あなた 「 …… じゃあ 、ね 」















少しでもいい 。少しでも 、イサギくんの心に火を灯せたらそれでいいんだ 。















凛 「 何言ってんだ 」












いつこちらへ歩いて来たのか 、凛は私の顎を優しく掴んで頬に1つ口付けを落とした。












凛 「 お前は誰にも引き抜かせねーよ 」













潔 「 な……… っ 、!! 」

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