すぅぅ …… っと 、目の前が暗くなっていく。
その数秒 、まるで時間が止まったような
あなた 「 ………負け た ……… 」
頭の中でただ 、「 負けた 」という情報だけがぐるぐると渦を巻く。
…………なんで ? 負けただけ 、ただ 、凛達のチームに 、引き抜かれた、それだけなのに
あなた 「 どうしてこんなに 、悔しいの 」
何か胸に 、突っかかる。いつもの私じゃないみたい 。いつもの私なら 、負けただけでこんなに悔しがるなんて 、そんな事…… 。
頭の中で情報を整理していると 、凛がこちらに歩いてきている事に気がついた。
凛 「 来いよ 」
そう言って 、私の手首をガシッと掴んで立たせようとした 、が 。
あなた 「 や 、 ちょ 、 待」
凛 「 んだよ 」
あなた 「 ドリンクと タオル …… 」
まだ私には 、仕事がある。
マネージャーとして 、仕事は全うしなければならない。ので 、フィールド上にいる皆を見た。
どうやら 凛達は蜂楽くんを引き抜いたらしく 、イサギくん達と何かを話している。
その時既に 、イサギくんの目に光は灯っていなかった。
そんなイサギくんに私はゆっくりと近づいた。
私がピッチ上を歩く音だけが 、嫌にその場にこだまする。
あなた 「 イサギ 、くん 」
私がそう声をかけると 、イサギくんは地面にやっていた視線を 、ゆっくり顔を上げて私と目を合わせた。
潔 「 ………あなた 」
潔 「 は 、はは
ごめんな 、俺 絶対譲らないとか、言って… 」
あなた 「 あのさ。 …私 、イサギくんを待ってる 」
潔 「 …………え ? 」
あなた 「 イサギくん達が私を奪ってくれるのを 待ってるって事 。 」
あなた 「 私だけじゃなくて 、蜂楽くんもね 」
潔 「 ………… お 、おう 、!! 」
あなた 「 …… じゃあ 、ね 」
少しでもいい 。少しでも 、イサギくんの心に火を灯せたらそれでいいんだ 。
凛 「 何言ってんだ 」
いつこちらへ歩いて来たのか 、凛は私の顎を優しく掴んで頬に1つ口付けを落とした。
凛 「 お前は誰にも引き抜かせねーよ 」
潔 「 な……… っ 、!! 」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!