第16話

【17話】 出発
1,622
2020/04/28 08:36
(※これは17話です。16話【小さな幸せ】をまだ見ていない方はお先にそちらをご覧下さい(*^^*)








そして、事故から14日経過した。

そう。

予定していた旅行当日。
賢志郎さんの怪我の回復は順調らしく、3日前には退院して今は家で安静に過ごしているらしい。
ー待ち合わせは9時に東京駅。
キャリーケースを引っ張って駅に着くなり彼の姿を必死で探す。


日本の大都市の東京駅には大勢の人で溢れかえっていて、朝一番でもお構い無しに人でいっぱいだ。
あなた
(まだ着いてないのかな.......)
と、そのとき。
川西賢志郎
あなたっ
背後から聞き覚えのある声がした。
ぱっと振り向く。


そこには銀色のスーツケースを引っ張って、ダウンにメガネ姿のoff感溢れる賢志郎さんの姿。思わずキュンと胸が高鳴る。


こんなに人で溢れかえっている所だけど、川西さんだけはキラキラと輝いて見えてオーラが違う気がする。。
あなた
おはようございますっ!
川西賢志郎
おっ、張り切ってるやん
あなた
当たり前じゃないですか!賢志郎さんとの旅行ですよ!もう楽しみで楽しみで夜あまり寝られなかったですもん!
川西賢志郎
そっかそっか、それは俺も一緒や。めっちゃ楽しみにしてた!
あなた
あっ、体調は大丈夫ですか?
川西賢志郎
大丈夫、病院の人にも水田にもOK貰ったし(笑)でも、万が一の為に薬は常備しろって言われて、痛み止めは何個かもってきた。
あなた
ほんとに無理だけはしないでくださいね!?旅行中ちょっとでもしんどくなったらすぐに私に行ってください!
川西賢志郎
はぁい
彼は子供みたいに可愛らしく返事をした。
川西賢志郎
あなたっ。
あなた
川西賢志郎
誕生日おめでとう!
あなた
っ.......!ありがとうございますっ!

ーいいのかな、こんなに幸せで。

今世間で大人気の、あの和牛川西さんに誕生日を祝ってもらえて。
ホームまで手を繋いで歩いててー。

もしかしたら、まだ夢を見ているのかもしれない。

ー彼といると、そんな錯覚さえ覚えてしまうほど幸せだ。







ーそうして私たちは新幹線へ乗り込む。


ー行先は古都・京都。

着いたらまず、昼食をとって観光スポットを回り、旅館で懐石料理と温泉、というまさにThe・旅行!って感じのスケジュールらしい。


新幹線に乗っているとき、ふと川西さんは口を開いた。
川西賢志郎
あなたは京都来たことあるん?
あなた
修学旅行で一回来て以来なんです。
川西賢志郎
そっか、そもそも東京住んでたら関西あんまり来る機会も無いもんな。
あなた
そうですね....関西はほとんど...この間和牛さんの漫才観になんばに大阪来たくらい....?あっ、でも1度だけ幼い頃に大阪来たことありますよ!
川西賢志郎
へー!どこ行ったん?
あなた
どこかは忘れちゃったけど....大阪にひいおじいちゃんが住んでたので、お家に遊びに来たことがあって。
川西賢志郎
そうなんや、俺地元が東大阪って話したっけ。
あなた
そうなんですか!いえ、東大阪というのは初めて聞きました....
ひがしおおさか.......   

川西賢志郎
祭りが盛んでなぁ、ほんまええとこなんよ。またおいで!案内する!
あなた
あっ、はい!
それからしばらくして京都駅に着いた。

そこから電車を乗り継ぎ、随分山奧へやってきた。
あなた
すごい静かで人も少ないですね.......こんなところに名所があるんですか?
川西賢志郎
割と穴場かもしれんな。ベタに清水寺とか嵐山でも良かったけど、修学旅行で訪れてるかなって思って。
あなた
なるほど!そこらへんは定番の定番ですもんね。
しばらく歩くと、灯籠が連なる階段が見えてきた。
あなた
すごい幻想的ですね.......!
川西賢志郎
貴船神社っていうんよ。ここずっと登ったところにお寺があるから、そこでまずお参りしていこっか!
そういって階段を登った先にある神社へやってくると、観光客がちらほらいた。
横に並んで参拝する。



ーずっと、彼と一緒に居れますように。


そっと手を併せて心で願った。
参拝を終えると、ある文字がふと目に止まった。
あなた
あっ、みてくださいっ!水占いって書いてありますよ!やってみましょうよ!
川西賢志郎
ええな。すみません、2つください
それぞれ買うと、水のところまでやってきてしゃがむ。
あなた
わぁ....文字が浮かんできましたよ!
川西賢志郎
ほんとやね!
あなた
みてくださいっ!私大吉でした!
おみくじを手に取り、ぱっと賢志郎さんに見せる。
川西賢志郎
おっ、すごいやん!俺はー.......
あなた
何吉でした?
彼は少し間を開けて、弱ったような顔をして口を開いた。
川西賢志郎
俺、中吉やったわ!なんか良いのか悪いのか中途半端やね(笑)
あなた
あははっ、確かに(笑)
あなた
...あ、私の結構良い事書いてます!旅行・方向は全て良しって!
川西賢志郎
じゃあきっと今日はいい日になるで
あなた
ほんとですね!賢志郎さんは.......
川西賢志郎
あ、そこに御手洗あるけど、行っとかんで大丈夫?またこっから移動長なるけど
あなた
あっ....なら、行ってきていいですか?
川西賢志郎
ええよ。俺、ここでまっとくな
と、爽やかな笑顔を向けられ、ついキュンとしてしまった。

「賢志郎さんはどうでした?」と聞こうとしたけど、あんな優しい笑顔向けられたら、もういっか。と思ってしまう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【川西side】
御手洗に行った彼女の背中を見届けると、さっきのおみくじを見返す。


〇待人・・・来ぬ。迎えよ。
〇恋愛・・・逃す。
〇家庭・・・別離は不幸の根源。共に居よ。

あまりにも厳しい言葉に、ため息が零れる。

でも、最後の項目である【縁談】には不思議な言葉が並んでいた。



〇縁談・・・命の恩人に出会う。感謝せよ。


なんじゃそれ。ほんまなんか?

まぁ、もともと占いとか、都市伝説とか、そういうのは信じひんタチやし.......
そこまで気にしてはいないけど、でもやっぱ彼女の事を考えると、気にしてしまう。

ーと、その時。
ファンA
あのぉ〜、もしかして和牛の川西さんですか?
川西賢志郎
えっ?あ.......はい。
ファンB
わぁっ♡ウチめっちゃファンなんです〜!!
ファンC
握手してもらっていいですかっ?♡
川西賢志郎
良いですよ。
ファンC
わーっ♡ありがとうございます〜!!
大学生くらいの女性3人組が俺の元へやってきた。

言葉のイントネーションから、恐らく京都の人だと察した。
ファンA
川西さんおひとりなんですかっ?
川西賢志郎
あ、いや.......その、、男友達と来てて。
ファンB
へぇーっ、縁結びの神社に男性とですか?可愛いーっ♡
どこがやねん。


彼女と来てます、なんて言えへんし.......てか、こんなところにあなたが来てしもたら.......
ファンB
お写真も一緒にいいですか?SNSには載せないんで!
ふと、Twitterでゆずるのデマが流れたのを思い出した。

もし、この人たちが嘘ついてSNSに京都の縁結びスポットに川西さんがいた、なんて写真あげて呟かれたりしたらー.......

あかんあかん。
できればここは回避したい。

でも、どうすれば...
ーその時。
ポケットに入れていたスマホが鳴った。
よし、これや。
川西賢志郎
あ、マネージャーから電話やわ。ごめんな、また漫才見に来てな!
ファンB
あっ.......
それだけ言うと、駆け足でその場を離れる。

液晶画面にはマネージャー。

.......ではなく、あなたの名前。
川西賢志郎
もしもしあなた?
あなた
向かうので、今どこにいるか教えてください
川西賢志郎
今、灯籠の階段の麓やねん、来てくれる?
あなた
わかりました
そういって通話を切る。


.......助かった.....いいタイミングで電話掛けてくれた。

しばらくして、あなたと合流した。
あなた
さっきの、ファンの人達ですよね
川西賢志郎
そうやってん、ほんま助かった!ありがとう!
あなた
いえいえ!あのタイミングで私が行ったらヤバかったですもんね。
川西賢志郎
それもあったけど、写真頼まれてて。拡散されたらマズいなってなっててんよ。
あなた
そうだったんですね、そうには見えなかったです。
川西賢志郎
え?
あなた
.......いや、なんでもないです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【あなたside】

用を済ませて、賢志郎さんの待つ場所へ行こうとしたとき、綺麗な女性3人組が賢志郎さんを取り囲んでいた。

そのうちの1人は、嬉しそうに賢志郎さんの手を握っていた。
馬鹿。

馬鹿だ。

何嫉妬してんの。

こんなの、芸能人なんだから当たり前なのに。
あなた
その....凄く丁寧に対応してたので....流石だなって思っただけです
川西賢志郎
.......もしかして怒ってる?
あなた
っ.......!おっ、怒ってる訳じゃありませんよ!ただっ.......!断る時は、ちゃんと断らないと!
ついムキになってしまったことに気づいて、はっと我に返る。
あなた
す、すみません...和牛さんだから、あんなの当たり前なのに.......
すると、賢志郎さんは俯き気味の私の頭を優しくポンっと撫でる。
川西賢志郎
ーありがとう。
あなた
.......へっ?
川西賢志郎
そうやね、あなたの言う通りやわー。男として情けなかったな。今度からはちゃんと断る!
あなた
賢志郎さん.......
川西賢志郎
よっしゃ、ほな次行こっか!
と、彼は先を歩き出した。



いつもドキドキさせられてばかりだし.......
.......たまには私から、いいよね。


さっと先を歩く彼の手を握る。
川西賢志郎
っ.......
あなた
ほな行きましょっか♪
川西賢志郎
急に何よそれー(笑)
あなた
郷に入っては郷に従えですよっ!京都弁って可愛いですよねー♪♪
川西賢志郎
びっくりするやん(笑)
あなた
キュンとしたの間違いじゃないんですかー?クスクス
川西賢志郎
んーまぁちょっとな
あなた
えーっ!
なーんだ。上手くいったと思ったのに.......
強すぎる、、、
一体何すればキュンってくるのかな.......
川西賢志郎
あなたっ
あなた
ふと名前を呼ばれて顔を上げる。

ーと、同時に目の前が真っ暗になり、唇に柔らかな感触がした。
あなた
っー!?!?!?
川西賢志郎
.......たとえば、こんなんとか。
え?え?
もしかして、私の心読まれたの?
あなた
ちょっ....!!ここは人も居ますし.......っ!
川西賢志郎
誰も見てへんよ。.......どうする?続ける?
あなた
馬鹿なんですかっ!?
賢志郎さんは、真っ赤になる私の顔を見て満足そうにカッカッカッと笑った。
川西賢志郎
冗談やて(笑)
あなた
ったく.......
川西賢志郎
じゃあ、人おらん所やったらイチャイチャしてもええんやな
あなた
っ.......!?
川西賢志郎
ちゃう?
いたずらっぽい目で私を見る。
明らかに私の困った反応を見て楽しんでる。

このドS西めっ.......!!
あなた
それは.......
川西賢志郎
あ、ええんや
あなた
まだ何も言ってませんっ!!
再び賢志郎さんは楽しそうに笑った。


ーそして私たちは次の場所へと歩き始めた。










※ストーリーに出てくる水占いの項目は、実際の貴船神社の水占いの内容と異なっています。

プリ小説オーディオドラマ