(※これは17話です。16話【小さな幸せ】をまだ見ていない方はお先にそちらをご覧下さい(*^^*)
そして、事故から14日経過した。
そう。
予定していた旅行当日。
賢志郎さんの怪我の回復は順調らしく、3日前には退院して今は家で安静に過ごしているらしい。
ー待ち合わせは9時に東京駅。
キャリーケースを引っ張って駅に着くなり彼の姿を必死で探す。
日本の大都市の東京駅には大勢の人で溢れかえっていて、朝一番でもお構い無しに人でいっぱいだ。
と、そのとき。
背後から聞き覚えのある声がした。
ぱっと振り向く。
そこには銀色のスーツケースを引っ張って、ダウンにメガネ姿のoff感溢れる賢志郎さんの姿。思わずキュンと胸が高鳴る。
こんなに人で溢れかえっている所だけど、川西さんだけはキラキラと輝いて見えてオーラが違う気がする。。
彼は子供みたいに可愛らしく返事をした。
ーいいのかな、こんなに幸せで。
今世間で大人気の、あの和牛川西さんに誕生日を祝ってもらえて。
ホームまで手を繋いで歩いててー。
もしかしたら、まだ夢を見ているのかもしれない。
ー彼といると、そんな錯覚さえ覚えてしまうほど幸せだ。
ーそうして私たちは新幹線へ乗り込む。
ー行先は古都・京都。
着いたらまず、昼食をとって観光スポットを回り、旅館で懐石料理と温泉、というまさにThe・旅行!って感じのスケジュールらしい。
新幹線に乗っているとき、ふと川西さんは口を開いた。
ひがしおおさか.......
?
それからしばらくして京都駅に着いた。
そこから電車を乗り継ぎ、随分山奧へやってきた。
しばらく歩くと、灯籠が連なる階段が見えてきた。
そういって階段を登った先にある神社へやってくると、観光客がちらほらいた。
横に並んで参拝する。
ーずっと、彼と一緒に居れますように。
そっと手を併せて心で願った。
参拝を終えると、ある文字がふと目に止まった。
それぞれ買うと、水のところまでやってきてしゃがむ。
おみくじを手に取り、ぱっと賢志郎さんに見せる。
彼は少し間を開けて、弱ったような顔をして口を開いた。
と、爽やかな笑顔を向けられ、ついキュンとしてしまった。
「賢志郎さんはどうでした?」と聞こうとしたけど、あんな優しい笑顔向けられたら、もういっか。と思ってしまう。
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【川西side】
御手洗に行った彼女の背中を見届けると、さっきのおみくじを見返す。
〇待人・・・来ぬ。迎えよ。
〇恋愛・・・逃す。
〇家庭・・・別離は不幸の根源。共に居よ。
あまりにも厳しい言葉に、ため息が零れる。
でも、最後の項目である【縁談】には不思議な言葉が並んでいた。
〇縁談・・・命の恩人に出会う。感謝せよ。
なんじゃそれ。ほんまなんか?
まぁ、もともと占いとか、都市伝説とか、そういうのは信じひんタチやし.......
そこまで気にしてはいないけど、でもやっぱ彼女の事を考えると、気にしてしまう。
ーと、その時。
大学生くらいの女性3人組が俺の元へやってきた。
言葉のイントネーションから、恐らく京都の人だと察した。
どこがやねん。
彼女と来てます、なんて言えへんし.......てか、こんなところにあなたが来てしもたら.......
ふと、Twitterでゆずるのデマが流れたのを思い出した。
もし、この人たちが嘘ついてSNSに京都の縁結びスポットに川西さんがいた、なんて写真あげて呟かれたりしたらー.......
あかんあかん。
できればここは回避したい。
でも、どうすれば...
ーその時。
ポケットに入れていたスマホが鳴った。
よし、これや。
それだけ言うと、駆け足でその場を離れる。
液晶画面にはマネージャー。
.......ではなく、あなたの名前。
そういって通話を切る。
.......助かった.....いいタイミングで電話掛けてくれた。
しばらくして、あなたと合流した。
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【あなたside】
用を済ませて、賢志郎さんの待つ場所へ行こうとしたとき、綺麗な女性3人組が賢志郎さんを取り囲んでいた。
そのうちの1人は、嬉しそうに賢志郎さんの手を握っていた。
馬鹿。
馬鹿だ。
何嫉妬してんの。
こんなの、芸能人なんだから当たり前なのに。
ついムキになってしまったことに気づいて、はっと我に返る。
すると、賢志郎さんは俯き気味の私の頭を優しくポンっと撫でる。
と、彼は先を歩き出した。
いつもドキドキさせられてばかりだし.......
.......たまには私から、いいよね。
さっと先を歩く彼の手を握る。
なーんだ。上手くいったと思ったのに.......
強すぎる、、、
一体何すればキュンってくるのかな.......
ふと名前を呼ばれて顔を上げる。
ーと、同時に目の前が真っ暗になり、唇に柔らかな感触がした。
え?え?
もしかして、私の心読まれたの?
賢志郎さんは、真っ赤になる私の顔を見て満足そうにカッカッカッと笑った。
いたずらっぽい目で私を見る。
明らかに私の困った反応を見て楽しんでる。
このドS西めっ.......!!
再び賢志郎さんは楽しそうに笑った。
ーそして私たちは次の場所へと歩き始めた。
※ストーリーに出てくる水占いの項目は、実際の貴船神社の水占いの内容と異なっています。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!