ー『俺と結婚してください。』
確かに彼は今はっきりそう言った。
夢じゃ、ない。
聞き間違いなんかじゃない。
夢のような、嘘のようなホントだ。
嬉しくて涙が溢れてくる。
賢志郎さんの目を見て私は微笑んだ。
賢志朗さんは肩の力が抜けたように微笑んだ。
賢志朗さんは私の頬に手を添え、優しい眼差しを向けて続けた。
そう言って賢志郎さんは私を優しく抱き締めた。
ーそれからしばらく経ち、いよいよ留学を明日へと控えた私は、朝早くからキャリーバッグを引きながら東京駅へとやって来た。
その日は珍しく賢志郎さんはお仕事がお休みだった。
後から聞いた話によると、その日は前々からマネージャーさんと打ち合わせを重ね、私との時間を作るために調整してくれたらしい。
賢志郎さんと駅で合流すると、私たちは新幹線に乗った。
隣のシートに座って、1時間ほど経つと、窓から大きな鳥のような建物が見えた。
ー万博記念公園。
そう。
私は賢志郎さんの故郷・大阪へとやって来たのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。