第15話

2人の時間
1,431
2020/04/05 00:00
え.............



いま、なんて.......



血の気がサァーっと引く感覚がした。
水田信二
さっき、東京で収録終わって、俺は後輩とご飯食べに行って、賢志郎はバイク乗って家に帰ってたときに、信号無視してきたトラックと衝突したらしいんや。
バイク.......?トラック.......?

言ってることはわかってても、内容が入ってこない。

信じたくなかった。
手足の震えが止まらない。

なんとか声を絞り出して、恐る恐る聞き出してみる。
あなた
け.....けんしろ....さんは....今....どこに?
水田信二
救急搬送されて都内の病院や。意識不明らしい。
あなた
そんな.......
水田信二
ごめん、俺あなたちゃんの連絡先知らんかったから勝手に賢志郎の携帯からかけさせてもらったんや。今、俺とマネージャーは二丁目の〇〇病院にいるんやけど、あなたちゃんこれへんか?
あなた
行きます!
即答して電話を切る。

急いで支度をして、外に飛び出た。

トラックと衝突なんてー
バイクに乗ってる方が弾き飛ばされたに違いない。
大怪我どころじゃ済まないよね、、??
嫌だ.......
嫌だよ.......
お願い、無事でいて.......!!!!!
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【大阪・NGKの楽屋】
秋山賢太
ふみぃっ!!
山名文和
びっくりしたぁ!どうしたんすか秋山さん?!
秋山賢太
大変や!今、信二から連絡入って、賢ちゃんが交通事故におうたらしいんや!
山名文和
それマジすか!?意識は?
秋山賢太
意識不明らしい、バイク乗っててトラックとぶつかったって.......!
山名文和
トラック!?あのアホ新年早々何しとんねん...!!
秋山賢太
とりあえず、俺らもマネージャーに頼んで明日にでも東京向かおう!
山名文和
ゆずるらには伝えたんすか?
秋山賢太
多分、今頃信二が伝えているとは思うけど.......アインシュタインの2人は今日仕事で東京行っとるやろ?
山名文和
ならすぐ向かえるな...無事でいてくれや、賢ちゃん....
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はぁっ.......はぁっ.......
電車から降りて病院まで必死に走り続ける。
震えと涙が止まらなかった。
約30分。

やっと病院につくと、ロビーで水田さんが待っていてくれた。
水田信二
あなたちゃん
あなた
水田さん!
水田信二
わざわざ来てくれてありがとうな
あなた
そんなっ、賢志郎さんは?
水田信二
今手術終わって麻酔して寝とる。まだ目は覚めてない
あなた
賢志郎さんは助かりますよね!??
水田信二
まだ何とも言えんけど....あいつならきっと大丈夫や。今は信じてまっとこ、な?
と、涙目の私の頭を優しく撫でる水田さん。
あなた
賢志郎さんのいる部屋まで案内してください。
ーそうして【川西 賢志郎 様】と書かれた部屋へ静かに入る。
賢志郎さんは、静かに眠っていた。

頭には包帯。頬にはガーゼと、数箇所に痛そうな擦り傷があった。
あなた
.......私、今日ここで泊まります。
水田信二
え?
あなた
賢志郎さんの目が覚めるまで、ここにいます。いさせてください.......!
ふと、河井さんから言われた言葉が脳内を過ぎる。

ー『賢ちゃんを頼んだで。』



そうだ。私が彼を守るんだ。
河井さんに頼まれたもの。


水田さんはマネージャーさんと目を合わせると、少し呆れたような笑みを見せた。
水田信二
じゃあ、俺とマネージャーは、朝にまた来る。任せたで、あなたちゃん。
あなた
はい!
そう言うと、2人は病室を後にした。
私はベッドの傍にある椅子に座り、そっと彼の手を握った。
あなた
っ.......お願い.......無事でいて.......っ!!
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【川西side】
川西賢志郎
んっ.......
目が覚めると、見慣れない天井だった。



病院か.......??
あ、そうや。
俺、事故ったんやっけ。
そっと身体を起こす。
川西賢志郎
いったぁ.......
まだズキズキと頭が痛み、片手で頭を抑えた。
川西賢志郎
.......あっ
ふと横を目にする。

そこには、あなたの姿。

俺の手を握ったまま、ぐっすり寝てしまっていた。
昨日から傍にいてくれたんかな.......。
川西賢志郎
.......ありがとうな。
ぽつりと呟くと、『んっ.......』っとあなたも目を覚ました。
眠そうな目を擦りながら、こちらを見て驚いた様子で目をまん丸にさせる。
川西賢志郎
あなた、あけましておめでとう。
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【あなたside】
夢.......?

賢志郎さんが、いつもの優しい笑顔でこちらを見ている。
自然と涙が頬を伝って零れ落ちる。
あなた
うっ.....うっ.......あけましておめでとうじゃ....ありませんっ.......どれだけ心配したと思ってるんですかぁっ....!!
川西賢志郎
ごめんごめん笑
迷惑かけてしもうて
あなた
死んじゃったのかと思いましたっ.....
川西賢志郎
あほやなぁ(笑)俺はまだ死なへん。
.......死なれへんよ。
そう言って私の頬に手を触れ、優しく親指で涙を拭ってくれる。
川西賢志郎
......あなたを1人にさせて逝けるわけないやろ。
あなた
っ.......
そう言うと彼は顔を近づけて、甘い口づけをする。
いつの日か振りの、賢志郎さんの柔らかな唇。
カーテンの隙間から朝日が差し込み、私たちを優しく包み込んだ。
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コンビニでヨーグルトやフルーツを買って、水田はマネージャーと川西の部屋へやってきた。
水田信二
ーあなたちゃ.......
おはよう、と言いかけて水田は止めた。
2人がキスしているのを目にしたからだ。
マネージャー
あらら、起きちゃってたみたいですね♡
水田信二
今入るのはやめとこっか笑
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そっと唇が離れて、賢志郎さんは優しく微笑んだ。

少し間が空いてから、賢志郎さんは思い出したかのように口を開いた。
川西賢志郎
そう言えば、再来週の土日休みとれてん!
あなた
えっ?再来週の土日って.......
川西賢志郎
そう、あなたちゃんの誕生日!
そうか、すっかり忘れてた。
再来週の18日土曜日は私の誕生日だ.......
川西さん、覚えてくれてたんだ.......
川西賢志郎
その日さ、2人で旅行行かん?
あなた
旅行、ですか?
川西賢志郎
うん、もう行き先も決めてる。
あなた
私は大丈夫ですけど、賢志郎さんの怪我が.......
川西賢志郎
こんなもん2週間あれば治すって!
水田信二
それはどーやろなぁ
川西賢志郎
水田っ!
あなた
水田さんっ!
水田信二
はいこれ、体に良さそうなもん買ってきた。
川西賢志郎
あ、ありがとう.......
水田信二
あと、しばらくはお酒禁止な。
川西賢志郎
えっ
水田さんにきっぱりそう言われて賢志郎さんは露骨に顔を顰めた。
水田信二
あたりまえやろ。あなたちゃんも監視しとってな!
あなた
あっ、はい!
水田信二
まぁ、針縫うほど大怪我じゃなくて済んでよかったわ。
あなた
頭を打っただけだったんですか?
水田信二
軽い脳震盪と、右足に打撲と骨折に近い捻挫やって。ほんま奇跡やで、お医者さんもびっくりしてはったわ。上手いこと転けたんやろな
川西賢志郎
へー、ほんなら2週間あれば治るか
いやいやいや、いくら何でも2週間では.......
水田信二
いけるかどうかはお医者さんと俺が決める
川西賢志郎
なんでそこにお前が入っとんねん
相変わらず息ぴったりのお二人の掛け合いについ笑ってしまう。
あなた
とりあえずしばらくは安静にしてくださいね。また私も来ますから!
川西賢志郎
うん、おおきに。
水田信二
俺もまた来てやるから大人しいしとくねんで
川西賢志郎
なんでお前はさっきから上から目線やねん.......
水田信二
まぁまぁ、そんなカリカリせんと。じきに後輩とかアキナとかアインシュタインも見舞いに来る言うてるから。じゃあそろそろ行こかあなたちゃん。
マネージャー
あなたさんは家まで送りますよ。
あなた
え?いいんですか?
マネージャー
はい!自分に代わってずっと川西さんの面倒を見て下さったんです、それくらいさせてください!
水田信二
そやな。送ってもらいあなたちゃん
あなた
すみません、じゃあお言葉に甘えて.......
水田信二
ほんならまたくるしー
川西賢志郎
はいはい
そう言って私たちは川西さんの病室を後にした。
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【川西side】
トントントン。
3人が出て行って1時間ほど経ったとき。
病室のドアをノックする音が聞こえた。
川西賢志郎
はぁい
俺が返事をすると、花束を持った稲ちゃんと河井が入ってきた。
川西賢志郎
なんやお前らか.......
河井ゆずる
すまんな、あなたちゃんやのーて
川西賢志郎
誰もそんなん言うてへんやろ笑
稲田直樹
ほんま心配しましたよ川西さん〜無事で良かったです
川西賢志郎
心配かけてすまんな稲ちゃん。
稲田直樹
いえいえ、お花飾らして貰いますね
川西賢志郎
ありがとう.......ほんで菊て。どんなチョイスやねん
河井ゆずる
何が嫌やねん
川西賢志郎
菊は葬式の時の花やろ。縁起悪い.....
稲田直樹
これ買ったん兄貴なんすよ、俺も『いや、菊て!』って思ったんすけど
河井ゆずる
ほんなら悪いけど稲田ちゃう花買うてきてぇや。
稲田直樹
はぁ....面倒くさいわぁ....ほんなら行ってきますわ
河井ゆずる
頼んだでー
そう言って稲ちゃんは病室を出ていく。

病室に残された俺と河井。
しばらく沈黙が流れて、俺は口を開いた。
川西賢志郎
.......なぁ。菊買うて来たんわざとやろ。
河井の眉がピクっと動いた。
河井ゆずる
.......ばれた?
川西賢志郎
どーせ俺と2人で話したいからわざとちゃう花買うてきて、稲ちゃんに買いに行かせて俺と話す時間作ろうとしたんやろ
河井ゆずる
なんでそないに分かるん、怖
川西賢志郎
何となく分かるわゆずるの考えてることくらい。常識人のお前がこんなことする訳ないしな。
河井ゆずる
.......ごめんな、色々。その.......あなたちゃんのことやねんけど。
川西賢志郎
うん
河井ゆずる
俺、あの子のこと好きやったんや。一回俺から誘ってご飯も行った。ほんで偶然劇場で会うたときに、ファンの子に見つかって、俺が彼女いるって誤解されて....ほんまにごめん。
川西賢志郎
ええよ、別に。.......昨日もあの子と会うたん?
河井ゆずる
え?まぁ.......あなたちゃん言うてたん?
川西賢志郎
いや、俺昨日たまたまテレビ局でゆずるがあの子に電話してるのを見かけたんや。あれはなんやったん?
河井ゆずる
あれは、あなたちゃんからご飯誘われて...でも勘違いせんとって!それはあなたちゃんが俺にちゃんとお前の事が好きやっていうことを直接伝えてくれるために行ったんや
川西賢志郎
あの子から.......?
河井ゆずる
うん、ほら、お前も知ってると思うけど、Twitterでデマ流れてたやろ?あれをあなたちゃん自身も見はって、気にかけて俺にほんまのことを伝えてくれたんや。『私は川西くんのことが好きで、付き合ってるんです』って
川西賢志郎
そ、そうやったん.......
河井ゆずる
顔火照ってますけど
川西賢志郎
う、うるさい.......
なんや、そうやったんか.......


俺が忙しくて全然連絡とれへんかったから飽きてもうたんかと思った。
河井ゆずる
これで誤解も解けて一件落着やな。言うとくけど、俺はまだ諦めてないからな。
川西賢志郎
なにが
河井ゆずる
俺はこれからもあなたちゃんのことは好きやってことや。.......でも、お前らの邪魔はせんし、応援するから。
川西賢志郎
ゆずる.......
河井ゆずる
幸せなりや。
川西賢志郎
.......言われんでも
俺たちは目を合わせてから少し笑った。
横のテーブルに置いてあったお茶のペットボトルをとり、飲んでいた時、ゆずるは口を開いた。
河井ゆずる
...ほんで、あの子とはどこまでいったん?
川西賢志郎
ブフォッ
突然そんなことを聞かれて、お茶が吹き出た。
川西賢志郎
なな、なんやねん急に.......
河井ゆずる
いや、あの子に痕つけたんお前やろ?見たんやからな!今さら誤魔化せられへんで
川西賢志郎
っ.......キスまでや。
河井ゆずる
ほんまかー?抱いたんやろ
川西賢志郎
そこまでいってないわっ。.......でも、今度旅行行く時には.......とは考えてる.......
河井ゆずる
うわ、旅行行きよんかい
川西賢志郎
まぁ、マネージャーに頼んでスケジュール空けてもらったし。この体が治れば、やけど。
河井ゆずる
ほぉー。ていうか。あの痕つけたんは何?虫除け?
川西賢志郎
虫除けや。ほんまのこと言うとお前除けや。
河井ゆずる
え?
ゆずるは目を丸くする。
川西賢志郎
お前があの子狙ってるって分かってから、あの子に手ぇ出されへんようにするためにした。
河井ゆずる
はぁ〜流石束縛気質なやっちゃなぁ...
川西賢志郎
これくらいするやろ、ほんまに惚れた子には。
河井ゆずる
はいはい、ご馳走様。また旅行の感想も聞かせてや
川西賢志郎
最後まで聞かれへんくらい楽しんでくるわ
河井ゆずる
うわ、目ぇ怖っw
俺たちの笑い声が室内に響いた。

それから数分後、稲ちゃんが新しく花を買って持ってきてくれた。


無駄な出費やで.......と思いながら、礼を伝えると2人は病室を後にした。
その日は、アインシュタインの後に後輩と、アキナの2人もわざわざ大阪から来てくれた。
山名は謎に習字で、「無病息災」と書いたものを持ってきて病室に飾ってくれたし、

秋山さんは秋山さんで、和牛の似顔絵を描いてきてくれて飾ってくれた。
みんなのためにも、あの子のためにも、早く治そう。
そう思って俺は眠りについた。