無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第4話

町案内と妖怪案内


 木漏こもれ日の差し込む森の中、私はつづるの手を引いて通学路の丸太階段を上っていた。

 森の中は本当に公園のようで、妖怪たちが遊んでいたり、くつろいでいたり、中にはあばれまわっていたりなど様々だった。

 今までとは違う景色を綴と見て話すのが楽しくて、私はそれが癖になっている。

高槻 空央
高槻 空央
着いた!
森園 綴
森園 綴
ここは学校?
高槻 空央
高槻 空央
うん、私の通う高校!
けど、そっちじゃなくてー。
ほら、ここから見下ろしてみて!
森園 綴
森園 綴
わぁ、きれいだね。
町全体が見えるんだ
高槻 空央
高槻 空央
そう!
お礼になるかわかんないけど、町案内なんてどうかなーって。
森園 綴
森園 綴
すごい助かるよ!
ありがとう
高槻 空央
高槻 空央
よかった!
じゃあ、まずは、あの赤っぽい瓦屋根かわらやねつづるのおばあちゃんの家ね。
で、あっちが――


 町全体がきれいに見渡せる場所から一通り説明し、また階段を下りて実際に歩きながら案内を始める。

 その間もずっと私たちは手をつなぎ、小川で水浴びをしている鳥の様な妖怪や、道端みちばたに寝転んでいる人によく似た妖怪を眺めていた。

 けど、綴は決してビニール傘をたたむことはなく、妖怪たちと目が合わないよう眼前がんぜんをそれでさえぎる。

高槻 空央
高槻 空央
(綴と約束したし、妖怪と絡みたいわけじゃないけど、
こんなに避けるのはトラウマとかがあるのかな?)










 町を歩きつくして日もかたむいてきたころ、そろそろ帰ろうかと話していると道の先に町内看板が見えてくる。

 それの前には角の生えた妖怪が立っていて、夕日のせいもあり不気味な長い影を作っていた。

 綴は町内看板を横目で見るだけで通り過ぎようとするが――。

森園 綴
森園 綴
……空央あお、これって


 しかし、それ以上に興味きょうみを引く何かがあったようで、足を止めたのは綴の方だった。彼は、達筆たっぴつな字で書かれた「椿つばき祭り」の張り紙を見つめて私に声をかける。
森園 綴
森園 綴
夏祭りがあるの?
高槻 空央
高槻 空央
うん、夏祭り……なんだけど、メインは大人たちの酒盛さかもりって感じかなぁ?
森園 綴
森園 綴
ふーん、なんで夏なのに「椿祭り」?
高槻 空央
高槻 空央
あー、それは私も知らなーい。
なんでだろうね?
気にしたことなかったかも


 そう、何気ない綴の質問に私は知っていることを素直に答えると、目の前に立っていた妖怪があざ笑うような声をらした。

角の生えた妖怪
ククッ。
椿、あわれな奴め


 角の生えた妖怪は、私たちが聞えていることを知ってか知らずか、そうつぶやいて立ち去ろうとする。

高槻 空央
高槻 空央
つ――。


 「椿って花だよね?」思わず口にしてしまいそうになった疑問を私は必死に飲み込んだ。綴は私の手を引いて足早にその場を離れようとする。

高槻 空央
高槻 空央
ごめん、私また
森園 綴
森園 綴
ん、大丈夫だよ。
我慢がまんしたんでしょ?
高槻 空央
高槻 空央
う、うん


 少しの沈黙ちんもくが流れ、私は自分にかつを入れるために繋いでいないもう一方の手でほおを叩く。

高槻 空央
高槻 空央
(せっかくの楽しい時間を暗くするな、私!
次はもっと気を付けること! はい、反省終了!)
高槻 空央
高槻 空央
また明日もあの木陰こかげで待ち合わせね!
森園 綴
森園 綴
うん、待ってるよ
千紘
あれ? 空央?


 綴の手を引いて歩き出そうとした時、後ろから聞き慣れた声で呼び止められる。

 振り返って私も名前を呼ぼうとしたが、彼女の頭上で胡坐あぐらをかいている小人に目が行ってしまい吹き出しそうになるのを堪えた。

高槻 空央
高槻 空央
ぶっ……、ふぅ~。
千紘ちひろじゃん! 部活はどうしたの?
千紘
え、今の間はなに?
高槻 空央
高槻 空央
気にしないで!
千紘っていつも髪がツヤツヤできれいだなぁって!
千紘
はぁ? 急に気持ち悪いんだけど、まぁいいわ。
部活は明日練習試合だから早めの解散になったの


 私が突拍子とっぴょうしもないバカだと思われただけで場がおさまると、千紘ちひろの視線は綴へと向かう。

千紘
となりの人はうわさ森園もりぞのさんのおまごさん?
高槻 空央
高槻 空央
え、噂ってもう何か話が出回ってるの?
ごめんね、綴。田舎だから噂話とかすぐ広まっちゃって
森園 綴
森園 綴
……あぁ、大丈夫です


 千紘がいるせいか綴は無表情で、初めて会った頃のように言葉も少し素っ気ない。

 いつもの彼を知らない千紘は、それに構うことなく話を続ける。

千紘
まぁ、空央の噂でもあるから耳に入ってないのかもね。
……ところで、そのビニール傘、なんで差してるの?


 もう慣れて忘れていたビニール傘の違和感いわかんに私も久しぶりに気づき、なんと説明しようか必死に考えをめぐらせる。

高槻 空央
高槻 空央
(人になんて会わないと思ってたからそういうの考えてなかったー!
どうしよう、綴が嫌な思いをしないような言い訳をっ!!)
森園 綴
森園 綴
これ紫外線しがいせん遮断しゃだんできる傘なんです。
……僕、肌が弱くて


 クールでりんとした雰囲気ふんいきをまとう綴は、最初の頃の奇麗きれいな美少年になっている。

 照れたり、素直な可愛い綴を知っている私は、勝手に優越感ゆうえつかんを抱いていた。

千紘
へぇ~、さすが都会人。
ハイテクなビニール傘だね


 そして千紘の視線はまた次へと移り、私と綴の間を見ている。

 なにを見ているのか視線を辿ると、これもまた慣れて忘れていたもので、私と綴はずっと手を繋いだままだった。

高槻 空央
高槻 空央
こっ、これはっ!!


 確実に誤解されていると思い私はあわてて説明しようとしたが、妖怪の話を含んでいてそれができないことを思い出す。

 千紘はニタニタと楽しそうな笑みを浮かべて口を開く。

千紘
ふーん、いい感じだね。
夏休み、思ったより満喫まんきつしてるみたいで安心したわ
高槻 空央
高槻 空央
そ、そんなんじゃないっ!!
もう、明日があるんでしょ!?
家で休んでてくださーい!


 私は一度綴の手を離し、千紘の背中を思い切り叩いて帰るように急かした。
千紘
えぇー、この前とは打って変わって冷たーい。
まぁ、邪魔者じゃまもの退散たいさんしますよ。
またねー
高槻 空央
高槻 空央
ごめんね、友達がなんかー……、うーん!


 そんなんじゃない、と言ってしまった手前、また手を繋いでもいいのか迷っていると、綴の方から手を差し伸べられる。

 綴は少し俯いてはにかみ、私にだけ聞える声でささやいた。
森園 綴
森園 綴
手、繋いでくれたら許してあげる


 それは反則だ、なんて心の中でさけび、私はもだえながら綴の手を取る。

 満足気な彼を見て私も顔がほころび、手を繋いで帰路についた。