第3話

3話 優しい王子様
翌日、学校に来ていた私は頭を抱えていた。


どうしよう、友達ができない!


原因は昨日、王牙くんにクラスメイトの前で
キスをされたせいだ。

クラスの女子の大半は王牙くんの
ファンなので敵視されるようになったし、
男子たちからも奇異の目で見られる始末。

完全に、教室に私の居場所はなかった。

途方に暮れていると、
隣から魔王の声が聞こえてくる。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
おい姫。放課後、空けとけよ
野々村 姫
野々村 姫
私に拒否権はないかと思いますが……。
一応、理由を聞いても?
佐伯 王牙
佐伯 王牙
ああ、拒否権はねえ。
そんでもって説明すんのが面倒だから、
行ってからのお楽しみってことで
野々村 姫
野々村 姫
そんなあ……

私が嘆きの声をあげると、
教室の入り口に立っている複数の女子が
王牙くんを呼んだ。

どうやら、他クラスの王牙くんのファンらしい。

私の姿を捉えた瞬間に、
女の子とは思えない鬼の形相で睨まれたから。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
いい子で待ってろよ

席を立ちながら、
王牙くんは私の前髪をくしゃりと撫でる。


私のことを彼女って言いながら、
他の女の子のところに行っちゃうんだ。

本当、彼女にするのは
誰でもよかったんだろうな。

たまたま、
私が隣の席だったからってだけなんだ。


その事実に、胸がチクリと痛むのを感じる。


あれ……?
なんで私、傷ついてるんだろう。

別に王牙くんのことなんて、
好きでもなんでもないのに……。


席を離れる王牙くんの背中を
複雑な気持ちで見送っていると、
それを見計らって優斗くんが声をかけてきた。
藤堂 優斗
藤堂 優斗
疲れてるみたいだね、大丈夫?
野々村 姫
野々村 姫
優斗くん……はい、なんとか
藤堂 優斗
藤堂 優斗
なんとかってことは、
困ってることには
変わりないってことだよね?
野々村 姫
野々村 姫
あ……実はさっき、王牙くんにいきなり
放課後空けとけって言われたんです
藤堂 優斗
藤堂 優斗
うん
野々村 姫
野々村 姫
私にも予定があるのに、横暴ですよね。
行き先も教えてくれないんですよ
藤堂 優斗
藤堂 優斗
……それ、まさか行くの?
野々村 姫
野々村 姫
え? 
まあ、逃げたら次の日が怖いですし
隣の席だから、
あまり揉め事を起こしたくないし……。

1週間乗り切れば、解放されるよね?

だったら、いまは大人しく、
あの魔王に従っといたほうが無難だと、
そう思ったのだけれど……。

優斗くんは難しい顔をしたまま、
私の両肩に手を置く。
藤堂 優斗
藤堂 優斗
そんなの危険だよ。
なにをされるか、わからないんだよ?
野々村 姫
野々村 姫
危険?
なんの危険のことを言っているのか、
検討がつかず、私がポカンとしていると、
優斗くんは困ったように笑う。
藤堂 優斗
藤堂 優斗
あいつに、
いきなりキスされたの忘れた?
野々村 姫
野々村 姫
あ……!
危ないって、そういうこと!?  
確かに、それはかなり危険かも……。
今度はキスだけじゃ、済まないかもしれないし。
藤堂 優斗
藤堂 優斗
カラオケとか、あいつの部屋とか……。
とにかく、閉鎖空間でふたりきりに
なっちゃダメだよ
野々村 姫
野々村 姫
う、うんっ。
でも、連れ込まれたらどうしよう!

どうやって逃げればいいの?
あの、俺様魔王から……!

血の気が引く思いで固まっていると、
優斗くんがポケットからなにかを取り出す。
藤堂 優斗
藤堂 優斗
困ったことがあったら、俺に連絡して。
これ、連絡先
そう言って、優斗くんはキレイに
折りたたまれた紙を差し出してくる。
野々村 姫
野々村 姫
ありがとう……
やっぱり、優斗くんは優しいな。

連絡先が書かれた紙を受け取って、
私が笑みを浮かべながら、お礼を伝えた。

そのとき──。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
さっそく浮気か、姫。
いい度胸だな