第7話

7話 ほっとけない人
野々村 姫
野々村 姫
もうっ、茶化さないで!
佐伯 王牙
佐伯 王牙
そこは照れながら、「そうです」って
言ってほしいところだけどな
そう言って王牙くんは座り直すと、
立てた片膝に頬杖をつく。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
別に、特に理由はねえよ。
女は信用ならねえけど、
暇つぶしにはなるからな
野々村 姫
野々村 姫
じゃあ、女の子と期間限定で
付き合うのも暇つぶし?
佐伯 王牙
佐伯 王牙
そうそう。そういう意味では、
お前はすっげえ優秀。一緒にいて
飽きなかったの、お前が初めてだから
野々村 姫
野々村 姫
それ、あんまし嬉しくないけどね。
で、どうして1週間なの?
佐伯 王牙
佐伯 王牙
期限決めといたほうが、
お互いに後腐れねえだろ
野々村 姫
野々村 姫
たったひとりを好きになったり、
そういう本気の恋に憧れたりしないの?
佐伯 王牙
佐伯 王牙
……本気の恋、ねえ
どこか冷めたような言い方に、
私は思わず口ごもる。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
俺のルックスに恋してる人間と、
本気の恋愛とかできると思うか?
野々村 姫
野々村 姫
そんな……外見だけじゃなくて、
王牙くん自身を好きになってくれる人
だっているよ!
佐伯 王牙
佐伯 王牙
いないね。みんな俺自身を知る前に、
この顔を好きなるからな
少し寂しそうに王牙くんは空を見上げると、
切なげに呟く。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
だから、俺がどんなに他の女に
目移りしようと興味ないんだろうな。
俺が彼氏って肩書さえあればいいんだよ
野々村 姫
野々村 姫
王牙くん……
そういうふうに、
見た目だけで判断されてしまう
恋をたくさんしてきたんだろうな。

だから、心で通じ合う恋を信じられないでいる。


──この人、なんかほっとけないかも。


迷子の子供のような顔をしている王牙くんに、
胸が締めつけられた。
野々村 姫
野々村 姫
……王牙くんは、それが寂しいんだね
佐伯 王牙
佐伯 王牙
は?
野々村 姫
野々村 姫
だから、そんなに
ひねくれちゃったんでしょう?
佐伯 王牙
佐伯 王牙
お前、意外と口悪いよな
野々村 姫
野々村 姫
王牙くん相手だからだよ……って、
そんなことはどうでもよくて
さほど気にしてない様子で、
カラカラと笑う王牙くんに、
私ははっきりと告げる。
野々村 姫
野々村 姫
いまの話を聞いてたら、
王牙くんは本当の自分を好きになって
ほしいって言ってるように聞こえたの

あくまで憶測だけれど感じたことを伝えれば、
王牙くんは黙り込んだ。
野々村 姫
野々村 姫
王牙くんは、素のほうがずっといい。
だから、完璧になろうとしなくていいよ
付き合いも浅いし、
王牙くんのすべてを理解できている
わけではないと思うけど……。

好かれるように振る舞ってる自分は偽物だから、
毎日きっと息苦しかったはず。
野々村 姫
野々村 姫
いまみたいに、もっと意地悪なところを見せたり、寂しいって素直に誰かを
頼ったりしていいと思う
佐伯 王牙
佐伯 王牙
カッコよくない俺なんて、
誰も求めてないのに?
野々村 姫
野々村 姫
みんなは、どうか知らないけど……。
少なくとも私は、いまの王牙くんの
ほうがずっと話しやすいし、好きだな
佐伯 王牙
佐伯 王牙
……っ、お前……
素直な気持ちを口にしただけなのに、
王牙くんは息を詰まらせて、
それから頬をほんのり赤く染めた。