第2話

2話 教室で公開キス!?
カタカタと震えていると、 
王牙くんが問答無用で
私のカバンの中に手を突っ込む。
野々村 姫
野々村 姫
あっ、ちょっと!
佐伯 王牙
佐伯 王牙
んーと……お、みっけ
私のスマホを探し当てた王牙くんは、 
勝手に操作して連絡先を登録してしまった。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
じゃ、よろしくな。
えーっと……名前、なんだっけ
野々村 姫
野々村 姫
野々村……です
佐伯 王牙
佐伯 王牙
あのな。付き合ってるんだから、
下の名前を言え
野々村 姫
野々村 姫
その件については、私は承諾してな……
佐伯 王牙
佐伯 王牙
早く言え
私の言葉を遮った王牙くんに、
思わず心の中で突っ込む。

──話を聞きなさいよ! この俺様魔王!

無言で王牙くんを睨みつけてみたけれど、
早くしろと訴えかけてくる目が怖かったので、
私は泣く泣く白状した。
野々村 姫
野々村 姫
……姫です
ボソボソと答えると、
王牙くんは目を見張ったまま、
言葉を失っていた。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
姫って……
この反応には慣れている。 

散々、この名前でからかわれてきたし。
野々村 姫
野々村 姫
どうせ、似合わないって
言いたいんでしょ
私は漫画や童話のお姫様とは違って、
ごく普通の女子高校生だし。

笑われるのは覚悟していたので、
ふいっと顔をそらしていると、
予想外の答えが返ってきた。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
いや、俺にぴったりじゃね?
野々村 姫
野々村 姫
え、なぜに?
きょとんとしていると、
王牙くんが私の顎をクイッと持ち上げる。


──わあっ、なに急に!?


目を瞬かせながら、
バクバクと鳴る心臓に息苦しさを
感じていると王牙くんは、ふっと笑う。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
俺の名前、【王】が入ってるだろ。 
だから【姫】と釣り合うし、
相性ばっちりだと思うけど?
野々村 姫
野々村 姫
ああ、王様とお姫様ってこと? 
なるほど……って、そうじゃなくて!
い、いちいち近いです。離れて!
場所もわきまえずに近づいてくる
王牙くんの胸を押し返そうとしたのだが、
手首を掴まれて動きを封じられてしまう。
野々村 姫
野々村 姫
……っ、離して
佐伯 王牙
佐伯 王牙
嫌だね。自分の彼女に触って、
なにが悪いんだよ?
野々村 姫
野々村 姫
だから、彼女になった覚えない!
佐伯 王牙
佐伯 王牙
お前に拒否権なんてねえから。
ただ、俺に頷け
ズイッと顔を覗き込まれた私は、
野獣のようにギラつく王牙くんの目に圧倒される。

どうして、逆らえないの?

身体が金縛りにあったみたいに動かなくて、
抵抗できない。

不思議な強制力があった。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
ほら、返事しろって。
俺の彼女になるんだろ?
野々村 姫
野々村 姫
あ……は、はい
──って、私はなんで受け入れてんの!?

王牙くんに誘導されて、
私はうっかり頷いてしまっていた。


みんなにも見られてるし、
恥ずかしくて死にそうっ。


羞恥心のあまり泣きそうになっていると、
王牙くんの肩を誰かがグイッと引いた。
藤堂 優斗
藤堂 優斗
佐伯さえき、彼女を離すんだ
王牙くんが振り返ると、 
その後ろにはクラス委員長である
藤堂とうどう 優斗ゆうとくんが立っていた。

この学校では成績優秀者が入学式のときに、
クラス委員長として発表される。

優斗くんもキレイな顔立ちをしていて、
新入生代表のスピーチのときの物腰柔らかな
印象から、すでに女子の人気を集めていた。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
ああ、優等生な王子様くんね。
悪いけど、邪魔しないでくんない?
藤堂 優斗
藤堂 優斗
そうはいかないよ
佐伯 王牙
佐伯 王牙
人の色恋にまで首を突っ込んでくる
とか……面倒なやつだな
藤堂 優斗
藤堂 優斗
どうとでも言ってくれ。
そんなことより君、入学早々に揉め事を
起こさないでくれないかな
佐伯 王牙
佐伯 王牙
教師かよ、お前……
藤堂 優斗
藤堂 優斗
この俺がクラス委員であるうちは、
好き勝手はさせないよ。
クラスのことも、彼女のことも
野々村 姫
野々村 姫
優斗くん……
頼りになるなあ。 

つい優斗くんに見惚れていると、
王牙くんが舌打ちをした。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
この俺が彼女にしてやるって言ってんの
に、他の男に目移りか
野々村 姫
野々村 姫
え……
向けられた苛立ちにビクッと
肩を震わせていると、

優斗くんの手を振り払った王牙くんが
私の顔を両手で包み込んでくる。
佐伯 王牙
佐伯 王牙
なんか、久々燃えてきた……。 
お前、1週間で俺のことしか考えられ
なくしてやるから、覚悟しとけよ

不敵に笑った王牙くんが、顔を近づけてきた。

目の前が陰って、
なにをするつもりなのかと戸惑っていると……。
野々村 姫
野々村 姫
んんっ!?
唇に、暖かな感触。

それは何度も角度を変えて重なって、
私の頭は真っ白になった。


ちょっと、これって……。

私、クラスのみんなの前で、
王牙くんにキスされてる!?

心の中で、私は悲鳴をあげる。

──こうして、私の高校生活は
波乱の幕開けをしたのだった。