第10話

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2020/12/29 14:33
練習が終わり玄関で光ちゃんを待った。
(まだかなあ…)

いつもならパッと着替えて
すぐ玄関に来てくれるのに…

そう思っていると
星海 光来
星海 光来
あれ、陽菜?
と後ろから声をかけられた
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
光ちゃん!
星海 光来
星海 光来
なんでここに…
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
一緒に帰ろうと思って…
星海 光来
星海 光来
そうだったのか
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
…ダメ、だった…?
星海 光来
星海 光来
ううん。久しぶりに一緒に帰ろう
そう言って彼は私の隣を歩く。
久しぶりに2人で帰る。
告白された日のことを思い出してしまった。

無言のまま時がすぎる ___
星海 光来
星海 光来
あの、さ…
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
光ちゃんっ
星海 光来
星海 光来
ん?
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
明日どっか行きませんかっ
初めて自分から誘った。
いつも光ちゃんからだったから、
誘うのはとても緊張した。
星海 光来
星海 光来
明日?
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
環くんに部活オフだって聞いて…
星海 光来
星海 光来
あ〜、あいつ…
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
もしよければ…どこか…
星海 光来
星海 光来
ごめん、予定あるんだ
そう言って彼は申し訳なさそうに謝っていた。
勇気を出して誘ってみたのに…
このこと、前から知っておけば
光ちゃんとどこかに行けたのかもしれない。
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
そっか
星海 光来
星海 光来
その次の日は?空いてる?
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
え?
星海 光来
星海 光来
明日が土曜だから…日曜日!
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
空いてる…
星海 光来
星海 光来
じゃあ日曜日な!
久しぶりに光ちゃんと
お出かけができるとウキウキした。




















__________________

次の日、彼は女の人といた。
私の知らない人だった。

たまたま買い物をしに行ったら
街で見かけた。

なんの予定かと思えば
デートか。そうか。

光ちゃんは私のことなんか諦めて
他の女の人のところに行っちゃったのか。












あれ…なんでこんな、泣いてるの。
私が言わなかったから…
光ちゃんは他の人のところに行っちゃったんだ。










ねえ、光ちゃん。
私は光ちゃんが好きだよ ______












__________________

日曜日。
彼との約束の日だ。
でも私は動く気になれなかった。

体調崩したと言っても彼は家に来る。
ドタキャン…か…
それも嫌だけど
昨日の今日で整理ができるわけない

私は光ちゃんが来る前に
着替えて出かけた。

待ち合わせは家の近くの公園だった。
その公園を避けて、どこかいいところないかな、と思った。

9月中旬。
まだ少しだけ、夏の暑さが残る。

(今年みんなで海行ってないな…)
と、思ったがここは長野県。
内陸部なので海なんかない。
毎年海がある県に両親は連れて行ってくれるのだが
今年は父が部長に昇進して仕事が忙しくなっていた。

1人で行こうにも行けない。
じゃあ海じゃなくて、山…?















そんなことも、どうでもいい。














ただ一人で歩いていた。
彼と会いたくないから。
彼に会ってどんな顔をすればいいか分からなかったから。

















______ 陽菜!!!

光ちゃんの声が聞こえた気がした。
いや、こんなところまで追いかけてこないだろう。
待ち合わせの時間になっても来ないから
母に出かけたと聞いたんだろうか。
テキトーに探してたら見つかった、みたいな?

いやいや、無い無い。
光ちゃんがこんなとこまで ______
星海 光来
星海 光来
陽菜…っ、ハァ、ハァ…
彼は私の腕を掴んでいた。
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
光、ちゃん…
星海 光来
星海 光来
ハァ、ハァ…こんなとこで…何、してんだよ!
怒っている。彼はものすごく怒っている。
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
いや…
星海 光来
星海 光来
俺と出かけるって約束…忘れたのかよ…
彼は少しだけ声が小さくなっていた。
それが少し可愛く思えた。
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
…忘れてなんかっ
星海 光来
星海 光来
じゃあなんでだよ!!
なんでこんなとこいんだよ!
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
ごめん…
星海 光来
星海 光来
心配した…っ
なんか巻き込まれたのかと…
私が約束を守らなかったことじゃなくて
一人でどっか行ってたことに怒ってるんだ。

光ちゃんはいつもそう。
私のことを心配してくれる。
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
光ちゃん、ごめ…
私が謝ろうとした時、
彼は私をぎゅっと抱きしめた
星海 光来
星海 光来
良かった…っ!
少しだけ彼の声が震えていた。













この言葉を聞いたら、彼は驚くかな。












貴方の声が
貴方の横顔が
貴方のバレーボールをする姿が
貴方の笑顔が















貴方の全部が ____________
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
好きだよ。























少しだけビクッとする彼の体。
抱きしめていた私の体を離して
彼は顔を背けた。











耳が真っ赤になっているところも
照れ隠しが下手なところも
何事にも必死なところも
星海 光来
星海 光来
陽菜…
馬渕 陽菜
馬渕 陽菜
光ちゃんの全部が、好きだよ
























光ちゃんは私のこの言葉
受け取ってくれますか ______?

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