練習が終わり玄関で光ちゃんを待った。
(まだかなあ…)
いつもならパッと着替えて
すぐ玄関に来てくれるのに…
そう思っていると
と後ろから声をかけられた
そう言って彼は私の隣を歩く。
久しぶりに2人で帰る。
告白された日のことを思い出してしまった。
無言のまま時がすぎる ___
初めて自分から誘った。
いつも光ちゃんからだったから、
誘うのはとても緊張した。
そう言って彼は申し訳なさそうに謝っていた。
勇気を出して誘ってみたのに…
このこと、前から知っておけば
光ちゃんとどこかに行けたのかもしれない。
久しぶりに光ちゃんと
お出かけができるとウキウキした。
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次の日、彼は女の人といた。
私の知らない人だった。
たまたま買い物をしに行ったら
街で見かけた。
なんの予定かと思えば
デートか。そうか。
光ちゃんは私のことなんか諦めて
他の女の人のところに行っちゃったのか。
あれ…なんでこんな、泣いてるの。
私が言わなかったから…
光ちゃんは他の人のところに行っちゃったんだ。
ねえ、光ちゃん。
私は光ちゃんが好きだよ ______
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日曜日。
彼との約束の日だ。
でも私は動く気になれなかった。
体調崩したと言っても彼は家に来る。
ドタキャン…か…
それも嫌だけど
昨日の今日で整理ができるわけない
私は光ちゃんが来る前に
着替えて出かけた。
待ち合わせは家の近くの公園だった。
その公園を避けて、どこかいいところないかな、と思った。
9月中旬。
まだ少しだけ、夏の暑さが残る。
(今年みんなで海行ってないな…)
と、思ったがここは長野県。
内陸部なので海なんかない。
毎年海がある県に両親は連れて行ってくれるのだが
今年は父が部長に昇進して仕事が忙しくなっていた。
1人で行こうにも行けない。
じゃあ海じゃなくて、山…?
そんなことも、どうでもいい。
ただ一人で歩いていた。
彼と会いたくないから。
彼に会ってどんな顔をすればいいか分からなかったから。
______ 陽菜!!!
光ちゃんの声が聞こえた気がした。
いや、こんなところまで追いかけてこないだろう。
待ち合わせの時間になっても来ないから
母に出かけたと聞いたんだろうか。
テキトーに探してたら見つかった、みたいな?
いやいや、無い無い。
光ちゃんがこんなとこまで ______
彼は私の腕を掴んでいた。
怒っている。彼はものすごく怒っている。
彼は少しだけ声が小さくなっていた。
それが少し可愛く思えた。
私が約束を守らなかったことじゃなくて
一人でどっか行ってたことに怒ってるんだ。
光ちゃんはいつもそう。
私のことを心配してくれる。
私が謝ろうとした時、
彼は私をぎゅっと抱きしめた
少しだけ彼の声が震えていた。
この言葉を聞いたら、彼は驚くかな。
貴方の声が
貴方の横顔が
貴方のバレーボールをする姿が
貴方の笑顔が
貴方の全部が ____________
少しだけビクッとする彼の体。
抱きしめていた私の体を離して
彼は顔を背けた。
耳が真っ赤になっているところも
照れ隠しが下手なところも
何事にも必死なところも
光ちゃんは私のこの言葉
受け取ってくれますか ______?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。