ドアが開き、声が聞こえた
もう一人、女の子の制服が見えた。
呼び捨てで呼んでいる。
それにも少し悲しくなった。
しばらく沈黙が続いた。
(これは聞いちゃダメなやつだ……)
光ちゃんはどこまでも真っ直ぐだ。
バレーボールにも勉強にも恋にも。
叶わない、負けてしまう
そうなったとしても
彼は諦めずに前に進もうとする。
光ちゃんの真っ直ぐさが好き。
光ちゃんの真面目なところが好き。
光ちゃんが楽しそうにバレーしてるところが好き。
光ちゃんの横顔が好き。
光ちゃんの声が好き。
光ちゃんの笑顔が好き。
光ちゃんの…、光ちゃんの……
最近、いつもより
光ちゃんのことを考える時間が多い。
何してるのかな、とか
今日は練習なんだな〜、とか
今、朱莉ちゃんといるのかな、とか。
気付いたら光ちゃんのことで頭がいっぱいだった。
(わたし…気づくの遅すぎ…)
ずっと隣にいたのに。
隣にいたからこそ、今いないことが不思議で
不安で泣きたくなるんだろう。
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大きな声が聞こえ
扉がバタンと閉まる音もした。
(朱莉ちゃん帰ったのかな…)
私が少し動いた時、後ろに並べてあった
使っていない机に足が当たって音がした。
(やば…!)
なるべく音を立てないようにもう一度隠れた。
光ちゃんは確認して
屋上から出て行った。
あれでもし見つかっていたら
どんな顔をして彼に会っていたのだろうか。
でも、もうすぐ後夜祭が始まる。
光ちゃんを誘えないまま
2年目の後夜祭が始まる。
最後にもう一度、誘ってみようと思い
ケータイを開くと、充電切れのマーク。
後夜祭が始まるアナウンスが聞こえた。
みんなグラウンドに集まっているだろう。
屋上は開放されているが、来る人は少ない。
私は屋上のベンチに座って花火を見ることにした。
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hoshiumi korai side...
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朱莉に告白され
学校祭も一緒に回ることに。
朱莉と過ごす時間は普通に楽しかった。
でも、朱莉といる度思い出すのは陽菜のことだった。
最近話ができてない。
まともに顔も見ていない。
陽菜のことばかり考えていた。
そんな時、朱莉に
後夜祭も回りたいと言われ連れてこられたのは屋上。
そこで、返事を聞かせてほしいと言われた。
俺は付き合えないと言った。
陽菜のことばかり考えてしまう。
陽菜には好きな人がいるのに。
____________ ガタッ
音が聞こえた。
誰かいるのかと聞いてみても返事はない。
もうすぐ後夜祭も始まるし
そろそろ降りようと思い、グラウンドに戻った。
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桃香が慌てて走ってきた
(そういや、あの時、誰かいたな…)
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もしあそこに居たのが陽菜なら
俺はなんて声をかけよう。
久しぶり?元気だった?
いや、そんなんじゃダメだ。
もっと、陽菜が安心できるような…
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hoshiumi korai side end...
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後夜祭のメインである花火が打ち上がった。
(はあ、今年はひとりでこの花火を見なきゃいけないのかあ…)
夏だというのに少し風が冷たく感じた。
光ちゃんを好きだと気付いて
光ちゃんに会いたいと思った。
今すぐ中の気持ちを伝えられるわけではないけど、今まで以上にちゃんと向き合える気がした。
____________ ガチャ
ドアが開いた。
そこに居たのは光ちゃんだった
どうして…
どうしてここに、きたの…?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!