その答えを聞くと、笹田は、スーと立ち上がり、締め切ったカーテンを開け、窓越しに、中庭を見ながら、何故か自分の生い立ちを、話し始める。
笹田は、幼少の頃、有る難病と闘っていた時期が有るのだか、生命の危機を、何とか乗り越え、今は不自由無く生活を送っている。
しかしながら、命と引き換えに、彼女は有る物を失っていた。
「私ね、子供を産めないの」「両親から、そう告げられたのショクだったな」「それを知ったのが、二十歳の誕生日の翌晩の事だったわ」
「今でもあの日の事は、忘れられない」
この時、笹田の衝撃的な、カミングアウトに、文華は驚き言葉を失う
しかし笹田は、構わず話しを続ける。
「昔はね、こう見えて、私結構モテたのよ」「男の子にチヤホヤされていた事が、少し嬉しかった」
「あの日迄はね」
この日を境に、笹田の心は、いつも闇の中に、ズッポリと沈み、苦しんでいた。
それは数年経っても変わらず、遂に彼女は恋をする事すら出来ず、その心は、更に闇の中に、ズッポリと沈んでいた。
しかしそんな、闇を心に抱える笹田に、転機が訪れる。
「私ね実は、四年前ヤツメ君担任だったの、でね家庭訪問に行った時」「彼言ったの」
「俺、進学はしないよ先生、恋文筆弁士になる」
「時々居るのよ、訳の分からない事を言って、私達教師を困られる生徒がね」
「でもねヤツメ君は、そんな彼等とは違っていたの」「その瞳は、真っ直ぐで、一点の嘘偽りなど、感じ取れないほど」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。