第32話

クリスマスのささやきと、…
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2020/12/05 09:35
ヤツメと、文華かが、緊張するのは、当たり前の事だった。

 イタリアンレストランの店内は、ため息が出るほどの飾り付けをされた、クリスマスツリーが、お客様を迎え、店内の何処を見てもオシャレな装飾が施していて、それはまるで、彼等を特別な空間へと誘うかの様だった。

 そんな素敵な空間に包まれ、頼んだ料理を待つ間、ヤツメと文華はこの日為に用意したプレゼントを交換する。

 文華は顔を赤らめ照れながら、手編みのセーターを渡し、ヤツメも文華同様に照れながら、ハートの形のネックレスを文華の首に優しく着けてあげる。

 この店は、多くの人で、賑わっているのだが、ヤツメには、文華の姿以外目に入らない、彼女の一つ一つの仕草や、笑顔を、目に焼き付け、愛おしいく想い、その全てを、瞳の奥の心の部屋に、大事に、大事に記憶する。

 それは文華も同じだった。

 ヤツメとの時間を、大切に思い、言葉出来ない感情を、胸の奥に、ソッと置き、彼女は今を生きる。

 「ヤツメさん美味しいね」「ここの料理」
 
 この日、この店のテーブルの上には、食空間を色取る為に、花が置かれているのだが、その花越しに、二人はたわいもない、話しながら、幸せを感じ合う

 「本当そうだね、文華ちゃん」
 「このスープ濃厚で、凄く美味しい」


 
 当然の事ながら、ヤツメは、文華の瞳に潜む悪しきもののけを消し去る事を、あきらめる事など無い、だが残念な事に、今もなお、その答えを見つける事が出来無いでいた。

 しかしヤツメは、全ての食事終えると、文華の瞳を、真剣な眼差しで見つめ、二人の未来のために、とても大事な事を発する。

 「文華ちゃん、僕は君の事が、大好きだ」
 それは、あまりにも単純で

 「出来るなら、君と結婚したい」

 真っ直ぐで

 「僕は、君といる時間を、とても大事に思う」

 柔らかく

 「こんな僕で良かったら」「卒業したら、僕と結婚してくれないか」
 
 温もりが感じられた。

 

 涙をする事を許され無い、文華は、ここの底から込み上げる感情を、必死になって抑え、柔らかな笑顔をヤツメに見せ

 コックリと首を縦に振り

 「ありがとう」「ヤツメさん」

 驚きのせいで

 「私、こんな嬉しい、クリスマスは」

 自分の伝えるべき事が

 「生まれて初めて」

 空回りする。

 しかし、心から願っていた、ヤツメからのプロポーズが、文華の心の底に眠る何かを動かす。
 
 文華は立ちあがり、身を乗り出し、ヤツメの唇に、キスをする。

 ヤツメは、文華の頬に優しくお返しのキスをする。


 人目を、はばからる事無く

 

 
 クリスマスという魔法が、彼等に優しくささやいた瞬間だった。

 

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