第3話

ヤツメの持つ不思議な力
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2020/06/30 09:11
ヤツメも、笹田同様に、彼女の瞳を覗き込んでいた。

 この時、ヤツメは笹田の心に抱える、今にも溢れ落ちそうな闇を、見抜く
ヤツメ
ヤツメ
先生、何か闇を抱えているね
ヤツメはニヤリと微笑み、笹田に優しく声を掛ける
ヤツメ
ヤツメ
恋文筆弁士の俺の力で、解決してやるよ
笹田
笹田
エッ
 この時笹田は、困惑した顔をみせるがしがし、ヤツメは笹田の心に抱える闇を見抜き、自分の持つ力で、その闇を取り除く事を、決意する。
ヤツメ
ヤツメ
先生ちょと待ってて、用意するから
 ヤツメは、そう言うと、布巾の上にすすりを置き、水を数滴垂らし、心を無にして、墨をすり始める…


 その所作は、とても綺麗で、何処か凛とした空気を、放ってた。
笹田
笹田
あら…素敵ーー
 そしてヤツメはおもむろに、一本の怪しげな模様が描かれた筆を、手に持ち、目を見開き、大きく深呼吸したのちに、力強く発し始める。
ヤツメ
ヤツメ
青き狐よ、我が筆に憑依し、闇に覆われるこの者に、生粋なる文字で、その心に明かりを灯せ
ヤツメが持つ筆が、何かの音楽でも奏でるかの用に、滑り始める。
 滑らかで力強い文字と共に、綺麗な紋様を描く
ヤツメが書いた文字には、力がある、目には見えないその力が、時として人の心を奪い去る。
 奪い去られたその心は、その文字のとりこになり、心に新たな光りを灯す。
笹田
笹田
なんなのこの気持ち…



・・・







笹田
笹田
文華さん私ね、病気の事を知ったあの日に、涙は捨てたの
 もう絶対に、泣かない、そう心決めたの
でも…
笹田
笹田
でもね、あの文字を目にして、涙が止まらなくなっちゃて、怖い位に溢れ出したの




・・・





 彼女のこの涙は、当然過去の物とは違い、喜びの余りに、涙が出たのでたので有るが、これこそが、筆がもたらす文字の力で、笹田の心より霞みが取れる。
笹田
笹田
何か不思議ね
なんだか、世の中が
明るく見えるの
ヤツメ
ヤツメ
これが筆に憑依した…

青きキツネの力です
ヤツメ
ヤツメ
俺の持つ力、いや
キツネ達の力は


こんなもんじゃ無い
 ヤツメはそう言い放ち、再び霞み取れたその瞳を、覗き込む

 そしてヤツメは、笑みを浮かべ
ヤツメ
ヤツメ
 へぇーー

先生立派な恋のつぼみが有るじゃないか
実は、彼女は幼い頃より、心に想う人が居たのだが、二十歳の翌日のあの夜より、心の奥底に秘め隠し、八年間過ごしていた。
笹田
笹田
な、なんでわかるの…

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