ヤツメは筆を再び手に取り、先程より優しい声を出し、丁寧な口調で発する。
まるで大事な恋人に話しかけるかの様に
ヤツメの言葉に誘われる様に、どこからか薄い桃色の毛並みキツネ達が浮遊し現れる。
当然笹田にはその姿を見る事は、叶わないのだが…
笹田は、この時何かを感じ取るのだが、それが何なのか分からない…
恋ギツネ達は、ヤツメに向かい優しく微笑み彼が持つ筆に音を立てる事無く憑依する。
するとヤツメは、まるで筆に魂が宿るかの様に、スルスルと文字を書き進め、最後に華やかな絵を描く、優しく書かれたその文字と挿し絵が、笹田の心を暖かく包み込み、勇気を与える。
この時ヤツメは、どこまでも透き通る様な瞳で、優しく微笑んでいた。
・・・
先生は…
信じてるのね
文華は、笹田の話しが、終わると、チラッと左手の薬指を確認する。
その指に、光る指輪を見て、微笑む
そう彼女は、ヤツメの書いた恋文を、長い間心を寄せいた者に渡し、初恋を実らせていた。
素敵…
恋文筆弁士ヤツメ書いた恋文は、恋に悩む者達を、華麗に、しなやかに、そして優しく解決へと導く…
翌朝 文華は笹田に言われるままに、ヤツメの家に向かう
ヤツメの家は、雑居ビルに囲まれたその奥に、ひっそりと古い日本家屋が、建っているのだが、そこは、一瞬足りとも、日に当たる事など無く、その暗さが、あやしの存在を思わせて、更に時より吹く、湿ぽく冷たい風が、文華の恐怖心をあおる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。