ヤツメは、今日一日店を閉め、文華を誘い、ある山に向かう事にする。
普段着物を着ているヤツメだが、この日、カジュワルな格好で、雑居ビルの前で、文華を待っている
すると、文華はヤツメを見つけ、手を振って駆け寄る。
「き、気合い入ってます?」「こ、この格好」
文華は、 登山服を着て、リュック背負い、その中には弁当を詰め込み、小走りで、ヤツメの元に訪れる。
ヤツメは、ニッコリ笑い「ん、ちょとね」「でも、大丈夫だよ」「可愛いから許す」
「ふふふ、ありがとう」
「ヤツメさんは、洋服意外と、似合ってますよ」
二人は、たわいも無い話し、幸せそうな笑顔を見せながら、電車に乗り込む
乗車時間は、三十分ほど
「ヤツメさん、目真っ赤なんだけど」
「大丈夫?」
二人は、吊革につかまりながら
たわいも無い会話を続ける。
「嗚呼、ちょっと厄介な書物に、手こずらせて、寝不足なんだ」
「でもね、大丈夫だよ」
バスに揺らる時間は、一時間ほど
文華は、 ヤツメと初めて横並びの席に座り、鼓動が高まる。
どっどっドキドキが止まらない、
徹夜で疲れているヤツメは、 ついついうたた寝してしう、文華の肩を枕替わりにして
文華のドキドキは、更に増す。飛び出しそうな、鼓動を、深呼吸し必死に抑える。
し、し、し幸せすぎる、幸せすぎて、死んじゃいそうだよ、 私
文華が、そんな事を考えている内に、彼等は目的地に到着する。
そこは、秋の冷んやりとした風が吹き、木々の隙間を潜り抜け、優しく彼等にキンモクセイの香りを届ける。
「素敵」
そこは、山間部にキンモクセイが多く茂り、広い野原には、多くの野草の花が生えていた。
「ここだ、ここなら直ぐに、見つかる」
文華は、その野原を見て、思わず走り出す。
「まるで子供だな」
ヤツメは、 徹夜して調べた、野草の花や、キンモクセイの花びらを、木に負担がかからない様に、黙々と摘み取り始める。
木々に話しかけ、「すまんな」「決して君達の命は無駄にしない」一つ、一つ丁寧に摘み取り、「君は、綺麗だな」ヤツメは、そう言うと、最後の一輪の花を手にする。
文華は、ヤツメに背を向け座り込み、何やら、#忙__せわ__#しく手を動かし、何かを作っていた。
ヤツメにバレない様に、後ろ手に回し、ヤツメの背後より、ソォーとヤツメに近すぎ、それをヤツメの上に乗せる。
秋の草花できた花かんむりは、少しいびつながらも、疲れたヤツメの心を和ませる。
「ありがとう」
ヤツメは、感謝の気持ちを伝えると、文華がかぶる帽子を、手に取り、最後に摘んだ一輪の花を、彼女の髪に優しくさす。
ヤツメが選んだ花が、耳元を鮮やかに、演出する。
「思った通りだ」「とても可愛いよ」
その後二人は、文華の作った弁当を食べ、ヤツメは、「ご馳走様、すごく美味しい弁当だったよ」と感謝を伝え、甘く、ゆっくりした、時間に包まれていた二人だが、バスの主発の時間が迫り、乗り場へと向かう
「もう、時間だね」と、文華は、名残惜しい顔を覗かせる。
「悲し顔をするなよ」「また来よう、ここに」
文華は、大きくうなずき、再び二人でバス乗り場に向かう
帰りのバスでは、文華は、よほど疲れたのか、ウトウトとヤツメの肩を枕替わりにし、寝てしまう、「いい顔して、寝てるなぁ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。