第14話

初めてのデートは、涙の味
93
2020/08/19 12:33
寒空の下、絶対にヤツメは来ると、信じて、待つ文華の元に走って駆け寄る

ヤツメの姿が、文華の瞳にうつる
 
ヤツメ
ヤツメ
悪い文華
辛い思いをさせてしまった
文華
文華
ばか…
ヤツメ
ヤツメ
寒かっただろう
このコート着な
文華
文華
バカバカ
文華は、ヤツメに抱きつき、ヤツメの胸の中で大粒の涙を流す
この涙も、残念ながら、文華の寿命を削る…
ヤツメ
ヤツメ
文華ちゃん明日
明日俺に時間を、君の時間を貸してくれないか

 今日の穴埋めをするチャンスを俺にくれないか






文華は、優しくうなずく



翌朝
 ヤツメは、今日一日店を閉め、文華を誘い、ある山に向かう事にする。

 普段着物を着ているヤツメだが、この日、カジュワルな格好で、雑居ビルの前で、文華を待っている
 すると、文華はヤツメを見つけ、手を振って駆け寄る。

「き、気合い入ってます?」「こ、この格好」
文華は、 登山服を着て、リュック背負い、その中には弁当を詰め込み、小走りで、ヤツメの元に訪れる。

 ヤツメは、ニッコリ笑い「ん、ちょとね」「でも、大丈夫だよ」「可愛いから許す」

 「ふふふ、ありがとう」
 「ヤツメさんは、洋服意外と、似合ってますよ」
 二人は、たわいも無い話し、幸せそうな笑顔を見せながら、電車に乗り込む

乗車時間は、三十分ほど

 「ヤツメさん、目真っ赤なんだけど」   
 「大丈夫?」
 二人は、吊革につかまりながら
 たわいも無い会話を続ける。

 
 「嗚呼、ちょっと厄介な書物に、手こずらせて、寝不足なんだ」
 「でもね、大丈夫だよ」


バスに揺らる時間は、一時間ほど

 文華は、 ヤツメと初めて横並びの席に座り、鼓動が高まる。
 どっどっドキドキが止まらない、


 徹夜で疲れているヤツメは、 ついついうたた寝してしう、文華の肩を枕替わりにして

 文華のドキドキは、更に増す。飛び出しそうな、鼓動を、深呼吸し必死に抑える。
    し、し、し幸せすぎる、幸せすぎて、死んじゃいそうだよ、 私

 文華が、そんな事を考えている内に、彼等は目的地に到着する。


 そこは、秋の冷んやりとした風が吹き、木々の隙間を潜り抜け、優しく彼等にキンモクセイの香りを届ける。

 「素敵」
 そこは、山間部にキンモクセイが多く茂り、広い野原には、多くの野草の花が生えていた。

 「ここだ、ここなら直ぐに、見つかる」
 文華は、その野原を見て、思わず走り出す。

 「まるで子供だな」

 ヤツメは、 徹夜して調べた、野草の花や、キンモクセイの花びらを、木に負担がかからない様に、黙々と摘み取り始める。
 木々に話しかけ、「すまんな」「決して君達の命は無駄にしない」一つ、一つ丁寧に摘み取り、「君は、綺麗だな」ヤツメは、そう言うと、最後の一輪の花を手にする。

 文華は、ヤツメに背を向け座り込み、何やら、#忙__せわ__#しく手を動かし、何かを作っていた。
 ヤツメにバレない様に、後ろ手に回し、ヤツメの背後より、ソォーとヤツメに近すぎ、それをヤツメの上に乗せる。
 
 秋の草花できた花かんむりは、少しいびつながらも、疲れたヤツメの心を和ませる。

 「ありがとう」
 ヤツメは、感謝の気持ちを伝えると、文華がかぶる帽子を、手に取り、最後に摘んだ一輪の花を、彼女の髪に優しくさす。
 ヤツメが選んだ花が、耳元を鮮やかに、演出する。
 
 「思った通りだ」「とても可愛いよ」

 その後二人は、文華の作った弁当を食べ、ヤツメは、「ご馳走様、すごく美味しい弁当だったよ」と感謝を伝え、甘く、ゆっくりした、時間に包まれていた二人だが、バスの主発の時間が迫り、乗り場へと向かう
 「もう、時間だね」と、文華は、名残惜しい顔を覗かせる。

 「悲し顔をするなよ」「また来よう、ここに」
 
 文華は、大きくうなずき、再び二人でバス乗り場に向かう

 帰りのバスでは、文華は、よほど疲れたのか、ウトウトとヤツメの肩を枕替わりにし、寝てしまう、「いい顔して、寝てるなぁ」
 
 

ヤツメ
ヤツメ
また来ょうな…

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