人は皆恋をすると、瞳に小さな恋のつぼみが芽吹き、そして多くの者は、その恋のつぼみを、何とか咲かせたいと、試みる。
誰も明確に、花を咲かせる方法など解らず、信頼出来る者に相談し、手さぐりで、ゆっくりと、心を締め付けられる程の想いをしても、優しく花を咲かせる為に、当然、努力を惜しまない
例え、その花が、すぐに消え逝く事と、解ったいても、小さな心の中で、もがき苦しみながら、花を咲かせ様とする。
「健一君、俺の仕事は、恋する者達の苦悩を少しでも和らげる事」
当然の事ながら、花を咲かせる事無く、恋のつぼみのそのままに、小さな心より、悲しみと共に地面に叩きつけられる様に、溢れ落ちるつぼみも、この世に多く存在す。
「一つでも多くの恋を、実らせる事」
ヤツメの書いた文字と、描いた挿し絵は、多くの者の恋の花を、華麗に、しなやかに、そして優しく咲かせいた。
しかし、今ヤツメは、健一に厳しい言葉を言い放つ「すまんが、今の君に、書く事の出来る、恋文は、、、」「無い」
この言葉を聞いた健一は、望みを失い肩をガッツリと落とすし、言葉を失う
勇気を振り絞り、自分に相談した健一の想いを知る文華は、にらむ様に、ヤツメを見つめ
ミコトは目を丸くし驚き、「そ、そんな、、、」
誰もが言葉を失い、しばらく沈黙の時間が、彼等を支配する。
しかし、突然、文華はヤツメをにらみ、怒りをあらわに始める。
「ヤツメさん、もうちょっと優しくしてあげて」「彼は、凄く真剣なの」「確かに、確かにね、同性愛者は世間から見ると、、、」「まだまだ」「受け入れられていないわ」
「だからといって、そんなに冷たくしなくても」
「いいじゃない」
健一は、怒りを露わにする文華の肩を、ポンと叩き、重い口を開き、自分の想いを話し始める。
「ありがとう文華さん」「僕なら大丈夫」「あのね僕」「ここに来る前から、何処で、こうなるんじゃ無いかと思っていたの」
「どうせ、僕みたいな奴、誰も相手にしてくれない」
この時、彼の顔はいら立ちと、寂しが複雑に入り混じっていた。
「その通りだ、今のお前など、誰も相手にしてくれない」「それどころか、気付く事すら無い」「真実の君に誰もね」
「真実の君をさらけ出さない限り」
「俺は、君の為に恋文を書く事は、無い」
「真実の僕?」
「そうだ」
「君の瞳の中には、重く硬い恋つぼみが一つ有る」「厄介な事にこのつぼみ」
「真実の、自分を隠したまま、無理に咲かせ様とすると」
「そのつぼみは、硬化する計りで」
「溢れ落ち事すら、叶わない」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。