こんな関係ダメだってわかってる
でも、
胸がちくりと痛んだ
好きだよと打ちかけてやめた
こんなことして何も変わらないのだから。
いつものところとは少し高めのホテル
普通のカップルなら何も思わないこと
私は違う
彼は結婚していて子供も2人いる
着いた時にはもういたみたいで
部屋のキーを渡された
「おまたせ、待った?」
「全然。今来たところ」
どちらからともなくキスをした
今までしたことないような、熱い、貪るようなキス
自然と彼の手が服に伸びて来る
普通のことなのに、今日は涙が出た
「どうしたの?」
「離れないで」
私を抱きしめた
悲しい恋でいい
短い夢でもいい
せめて泣き疲れて寝てしまうまでそばにいて
嘘で抱きしめて
不意に彼が歌を歌い始めた
だけど、それが激しいロックだったから
「もっと優しい歌がいいわ」
と作り笑いをして言う
「例えばこんな歌とかね」
と涙をこらえて歌うわ
これで終わりにしよう
もう会わない
そう決めたはずなのに
また、この前したようなキスを願ってしまう
わかってるの
彼の頭にはいつもどこかに奥さんがいるって
愛してる
その言葉が嘘でもいいから
一緒にいるときは、
私だけのものになって
悲しい恋でいいなんて嘘だった
短い夢でいいなんて嘘だった
醒めない夢がいいの
このまま2人がいいの
どうして言えないの?
今夜だけは
君だけを
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。