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第1話

クリスマスの出来事。
181
2021/05/06 12:15
クリスマスイヴの夜。
今日は大変な1日だったな〜。
窓の外を見ると、雪がチラチラと降り始めた。
月崎 志麻
(ホワイトクリスマスか…ええな。)
さぁて。そろそろ片付けを…
月崎 志麻
うわっ!
目線の先には、窓に顔を近づけて白い息を吐きながら中を覗く子供。
月崎 志麻
(あ、このケーキ見てるのか。)
窓に近い位置にあえて置いてあるうちの看板菓子。
俺はそれを少しとり、お盆に乗せる。
そして店の外に出て子供たちに近づいた。
そばに座ると、ケーキを差し出した。
月崎 志麻
味見してみる?
男の子
えっ…
女の子
いいの?
月崎 志麻
ええよ。サービス。
恐る恐ると言った感じでケーキを手に取る子供。
ケーキをほおばると、ぱっと明るい顔になり、むしゃむしゃと一気に平らげてしまった。
月崎 志麻
うまい?
男の子
美味しい!
女の子
うん!美味しい!
月崎 志麻
どんな味がする?
男の子
んっとね〜すごく甘い!
女の子
でも甘すぎないよね。
月崎 志麻
優しい味がするやろ?
月崎 志麻
うちの看板菓子なんよ。
女の子
美味しい!これなんて言うケーキ?今度お母さんに買ってもらう!
月崎 志麻
シフォンケーキやで。
でも…こんな美味しいケーキは他のとこでは食べれないかも?
ちょっといたずらっぽく笑って言う。
男の子
ねぇお兄さん。
月崎 志麻
ん?
男の子
そういえばね、さっきお店の前にいたお兄さんが、これをお兄さんに渡してって。
月崎 志麻
何?
男の子が差し出したものを受け取る。

4つに折りたたまれた紙…手紙かな?
月崎 志麻
ありがとう。どんな人だった?
男の子
どんな人だったっけ?
女の子
すごくかっこいい人だったじゃん!
男の子
あ、そうそう!
金髪で、背が高くて…あとね、
男の子が俺を見て言う。
男の子
お兄さんみたいにすごく優しい顔してた!
月崎 志麻
…ほんと?
男の子
うん!ね?
女の子
ほんとだよ!
月崎 志麻
…わかった。ありがとう。
ほら、今日はクリスマスだよ。おうち帰って、お母さんたちと一緒にケーキ食べな?
女の子
うん!ありがとうお兄さん!
男の子
ありがとう!ばいばーい!
月崎 志麻
ばいばい。メリークリスマス。
俺は店に戻ると、𝐂𝐋𝐎𝐒𝐄の札を出して机に座った。
折りたたまれた手紙を見て、俺は昔を思い出していた。

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