第10話

叶わなかった願い。
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2021/05/16 12:37
志麻side
バタバタバタバタバタ…バンッ!
月崎 志麻
セ、センラ!!!!
病室のドアが勢いよく開いたあと、目に飛び込んできた光景…
たくさんの管に繋がれ、口に酸素マスクをつけられている虫の息のセンラだった。
浦田 渉
月崎さん…
月崎 志麻
せ、先生!なんで…なんで!!!!
浦田 渉
…最前線をつくします。ですが、覚悟しておいて下さい。
月崎 志麻
そんなっ!
昨日の喜びから、一気に地獄へ引きずり降ろされた。
浦田 渉
坂田!点滴!
坂田 優
はい!
浦田 渉
これさして!
坂田 優
はい!
浦田 渉
黄百合さん聞こえますか!黄百合さん!
月崎 志麻
センラ!センラ!
黄百合 センラ
…パチッ
センラの目が開いた。俺に気づくと、ニッコリと微笑んだ。
月崎 志麻
センラ…センラ!
うらたを見ると、驚いた顔をしていた。
浦田 渉
黄百合さん…
月崎 志麻
先生!治療してください!センラを助けてください!
浦田 渉
…えぇ
黄百合 センラ
志麻くん…
酸素マスクのせいで、すごく小さい声だった。
月崎 志麻
センラ!聞こえるよ!センラ!
黄百合 センラ
こっち…来て…?
センラが俺に手を伸ばす。
黄百合 センラ
顔見せて…?
センラの近くに行き、伸ばされた手をぎゅっと握った。
月崎 志麻
センラ…頑張ってや!あと少しの辛抱やで!
黄百合 センラ
ねぇ志麻くん。俺、志麻くんにお願いがあんねん…
月崎 志麻
何?何か欲しいの…?
黄百合 センラ
パティシエになるって夢…無くさないで欲しいんよ…絶対に…諦めたりせんで欲しい。志麻くんには、俺の分まで頑張って欲しい。
月崎 志麻
センラの…分?なんでよ…センラだってやるでしょ?センラと俺で、大人気の店作るって言ったやん!!!!
黄百合 センラ
俺…無理やからさ…俺は志麻くんと一緒に…店作れへんから…
ポロポロとセンラの目から涙が零れる。
黄百合 センラ
ごめんな?俺は…志麻くんとの約束…守れへん…
月崎 志麻
守れるよ!!!!生きてれば!!!!必ず…!!!!
黄百合 センラ
ごめん…ごめんな…志麻くん…約束守れんくて…
センラの声が前よりもか細くなる。
黄百合 センラ
俺はもう…空に行かなきゃいけないんよ…俺のこと許して?
月崎 志麻
もちろんだよ…センラっ…センラのことならなんでも許してあげる!!!!
でも…でも!まだ行かんといて!!!!
俺の事1人にせんといて!!!!
泣きながらセンラの手を固く握る。
黄百合 センラ
志麻くんなら…素敵なパティシエになれるよ…きっと…きっ…と…
センラの手が俺から滑り落ちた。
それと同時になる甲高い電子音。
浦田 渉
ご臨終です…
月崎 志麻
あ…あ、あ…
黄百合 センラ
『これ美味いなぁ!』
黄百合 センラ
『さすが志麻くん!』
黄百合 センラ
『俺がいなくてもできるよ!』
月崎 志麻
あ…あ゛ぁぁッ!あ゛ぁぁぁ!!!!
センラの体を揺さぶりながら、俺は泣き叫んだ。
月崎 志麻
嫌やぁ!!!!まだ行かんといてやぁ!!!!
センラがいない世界なんて嫌やぁ!!!!センラ!センラァ!!!!
センラは、いくら名前をよんでも、もう答えてくれはしなかった。
月崎 志麻
センラ!!!!センラ!!!!センッ…
バタッ
浦田 渉
!?月崎さん!!!!
坂田 優
志麻くん!?
浦田 渉
しっかりしてください!!!!月崎さん!!!!

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