第11話

想いを…
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2021/05/17 13:36
志麻side
月崎 志麻
うっ…んん…
目を開けると、病院のベットの上だった。
月崎 志麻
…センラ
俺の手からすり抜けたセンラの手。
他の感触が未だに残っている。
浦田 渉
月崎さん
うらたが病室に入ってきた。
月崎 志麻
…うらた先生。
浦田 渉
…黄百合さんを助けられず、申し訳ありませんでした。
そう言って頭を下げた。
月崎 志麻
…謝らないでください。
謝って、何が変わるんですか?
そうだ。この人がきちんとやってくれればセンラは死ななかったかもしれない。なのに…なのに…!
浦田 渉
…申し訳ありませんでした。
月崎 志麻
出てってください。顔も見たくない!
うらたは無表情のまま病室のドアに手をかけた。
浦田 渉
あの状態で意識を取り戻すなんて、普通はありえないんです。
こちらに背を向けたままつぶやくうらた。
月崎 志麻
どういうことですか。
浦田 渉
黄百合さん…いえ、センラは最後まで闘ったんです。あなたに夢を捨てて欲しくなくて…あなたの夢を奪いたくなくて…
うらたが振り返る。その目には涙が浮かんでいた。
浦田 渉
どうかセンラの言葉を忘れないでください。
あなたのために闘ったセンラの想いを…無駄にしないでください。
深々と頭を下げるうらた。
そして病室を出ていった。
『あなたのために闘ったセンラの想いを…無駄にしないでください。』
月崎 志麻
センラの…想い…
『俺の分まで…頑張って欲しいんよ。』
二人で…頑張るって言ったじゃん。
大きい店構えて、大人気のスイーツバンバン出して、お客さんを笑顔にするって…描いていた俺らの物語。
まるでメレンゲのように脆いこの物語は…最初からなかったかのように弾け飛んだ。
月崎 志麻
ッ…ふっ…
忘れたくて、忘れたくて、仕方がない。
こんな辛く、悲しいことなんて、記憶から消し去りたい。
でも…センラを忘れたくない。
センラがいない世界はスローモーションのようで追いつけない。
月崎 志麻
帰ってきてよぉ…
誰もいない病室で、俺は再びすすり泣いた。

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