第5話

悠久に繰り返されし物語
1,939
2021/05/22 03:45
グリム
おお!!
いい感じに焼けたんだゾ!
あなた
良かったじゃん。
 僕は教科書を持ちながら歩く。
 森を通り抜け、橋を渡り、リドルさんと出会ったドーム状の建物から出てくる人たちと合流しながら大きな道へと出る。




 メインストリートー昼



 周りは数人がちらほら歩いている。
 そして、7つの大きな石像が立っていた。
グリム
スゲーんだゾ。
ここがメインストリートか。
あなた
確かに、昨日見てなかったね、この石像。
なんかみんな怖い顔してるよね。
グリム
このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ。
???
ハートの女王を知らねーの?
 テラコッタの髪に左目にハートのマークをつけてる人が現れた。
あなた
女王ってことは偉い人なんですか?
???
昔、薔薇の迷宮に住んでた女王だよ。
 その人から簡単にハートの女王について教えてもらった。
 規律を重んじる厳格な人柄らしい。
 それに、規律を破ったら即打ち首だったらしい。
 でもその人はクールで好きと言っていた。
グリム
っていうか、オマエは誰だ?
 今更感
エース
オレはエース。今日からピカピカの一年生。
どーぞ、ヨロシク♪
 テンションの高いのノリで気軽に自己紹介をした。
 同じ学年か。クラスも一緒かな?
グリム
オレ様はグリム!
大魔法士になる予定の天才なんだゾ。
 次は、僕かな…。
あなた
ぼk
グリム
コッチの冴えないのはあなた。
オレ様の子分なんだゾ。
 イラッ
あなた
どーも、冴えないあなたです。
エース
あなた? 珍しい響きの名前だな。
あなた
ちなみに、グリム様の子分じゃないです。
グリム
なあなあ、エース。それじゃあっちの
目に傷があるやつ〜〜〜〜
 グリムが、質問をして、答える。
 エース君は石像の人物のことをよく知っているようだ。
エース
〜〜〜。
クールだよな。
……どっかの狸と違って。
グリム
ふな゛っ!?
 そっか、エースも入学式にいたんだろう。
 グリムが何をやらかしたのかは知らないけど、いろんな生徒からの認知度は高いらしい。
 エースは大爆笑してる。
エース
なあ、お前ら昨日入学式でやらかした奴らだろ?
エース
入学式で一人足りなかった魔法使えない奴と、
お呼びじゃないのに乱入してきたモンスター。
エース
やー、入学式での先生の焦りっぷりよ。
入学式では笑い堪えるの必死だったわ。
エース
で、結局入学できずに2人して雑用係になったんじゃねーの?
はは、だっせー。
あなた
いや、どっからどう見ても生徒です。
エース
いやいや、その冗談はきついって。
だってマジカルペン持ってないじゃん。
 嫌に煽ってくるな、エース君。
あなた
マジカルペンは今僕らのために発注してもらってるんです。
マジカルペンを持ってない件に関しては学園長に直接聞いたらわかりますよ。
 入学早々、嫌なやつと会った。
エース
それにさ、『グレート・セブン』も知らないって
どんだけ世間知らずなんだよ。
エース
ナイトレイブンカレッジに来る前に
幼稚園からやり直すのをオススメするわ。
ぷくく……
 まあ、僕は煽り耐性はまだある方だ。
 反論したのは久しぶりかもしれないが。
 反論したら次は暴力で帰ってくるから基本的に反論はしない。

 しかし、問題があるとするのならば、グリムのほうだ。
グリム
ぐぬぬぬぬ……
あなた
落ち着けグリム、どうどう。
エース
ちょっとからかってやろうと思って声かけたけど
色々と予想超えてたね。
 グリムがものすごく不満そうな顔でエース君を睨みつけている。
エース
んじゃ、オレは君たちと違って授業あるんで!
せいぜい掃除頑張ってね、おふたりさん♪
グリム
コイツ〜〜! 言わせておけば!
もう怒ったゾ!
 あ、まずい、これはグリムの炎が来る。
 問題になる前に阻止しないと。僕は、グリムの方に行って抑えようとしたら、地面の石レンガの溝で躓いた。
あなた
うぇっ!?!?
 僕の体は軽く宙に浮いた。
 やばい、グリムがエース君に炎を当てようと構えてる、でも手は届かない…。
 終わった。
 手に色々荷物を持ってるから地面に手をつくこともできない。
 地面が顔に近づいていく。



 その瞬間時が止まる。




 すると、声が聞こえ始めた。
???
おやおや、こんなところに居るのはアリスかい?
小さくて可愛らしいね。
???
いや、人魚姫だね!
髪の毛がボサボサだし声が綺麗だわ!!
???
んなこたぁどーでもいい。
コイツがふさわしいんだろ?
???
そう。この子に、贈り物を授けましょう。
???
さぁ、力を合わせようじゃないか。
ハートの女王
そうだわ、きっと声は聞こえてるはずよ。
本当は貴方から自己紹介を聞きたかったわ。
私はハートの女王だよ。
百獣の王
今は、百獣の王と呼ばれているなぁ。
海の魔女
あたしはどんな不幸な人の願いも叶える海の魔女よ。
不幸せな魂を助けてあげるの。
砂漠の国の大賢者
そうだな、わしは砂漠の国の大賢者とでも名乗っておこう。
美しい女王
世界で一番美しい女王よ。
死者の国の王
俺は死者の国の王って呼ばれてるけど、まぁ、好きなふうに呼んでもらって…。
だけど、君の方から話しかけられるのかは知らないけど。
茨の魔女
ふむ、声は聞こえているようだな。
私は…まぁ名は聞かぬほうが良い。茨の魔女とでも呼ぶと良い。
 その七人はさっきエース君が説明していた七人と同じ見た目で同じ名前だ。
 ってことはとってもすごい人達が僕を見てるってことになるのかな…???

 というか、心の声は聞こえているという解釈で良いのかな?
リドル
ええ、とってもよく聞こえてるわ。
ところで、クロッケーは出来る?
 ごめんなさい、できないです…。
百獣の王
今はそんなどうでもいいこと聞く時間はねぇ。
さっさと終わらしまうぞ。
ハートの女王
あら、そう、残念。
茨の魔女
貴方はこの学園を救う鍵となっている。
そして、私達が選んだ、愛しい我らが子だ。
死者の国の王
この時をどれだけ待ち望んだことやら。
美しい女王
時間はないわ。
海の魔女
今すぐにするわ!!
勿論、痛くも痒くもない。
砂漠の国の大賢者
なに、恐れることはない。
わしらはお前さんに手を出せやしない。
呪いまほうをかけるだけだ。
 一体何が始まるのだろうか…。
 それに、呪いまほう
 危険なんだろうか……。
ハートの女王
悠久に受け継がれし記憶。
百獣の王
それは彼にこそふさわしい。
海の魔女
繰り返されし結末を。
砂漠の国の大賢者
今度こそ過ちバッドエンドを…
美しい女王
繰り返さぬように。
死者の国の王
描かれ続けてきた永い物語を…
茨の魔女
今、終わらせるよしよう。
全員
最後の物語ダ・ループ・エンド
 その瞬間、僕の頭の中に見知らぬ記憶が流れ込む。
 誰かと笑い合って、誰かと喧嘩していて、誰かと戦っていて、誰かと泣いていて、誰かを泣かせてしまっている記憶。
 何回も何回も同じ風景が流れる。
 リドルさんが黒くなっていたり、知らない誰かも黒くなっている。
 そして、大きな怪物の姿と息をしていない式典服の誰か達。
 見当たらないグリム。


 ズキッッッッ!!!!



 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


 頭が割れるように痛い。
 でも、目を閉じれないし頭を抑えられない。
美しい女王
この様子だと成功したみたいね。
 声だけでも頭に響く。
茨の魔女
私からはもう一つ贈り物を授けよう。
我ら7人の祝福という名の贈り物を。
 贈り物? そんなこと言ってる場合はじゃない。
 こっちは頭が割れるように痛い!


 そんな僕の気持ちは知らずに不思議な光が僕の回りによってきた。
 そして、僕の中へと入っていった感覚がした。ほんのり胸のあたりが温かい…
 のは一瞬でまた次は心臓が破裂しそうなほどに脈が早くなった。
 痛い。
 ただひたすらに痛い。
砂漠の国の大賢者
おや、時間のようだな
海の魔女
残念だわ。
死者の国の王
今回はすでに進み方が変わってるから、案外いけそうだよね。
百獣の王
今度こそ、ちったぁーマシな終わりにしてくれよ。
こっちはこっちで疲れるんだからよぉ。
美しい女王
これで見送るのは何回目かしら…。
これで最後になると良いのだが……。
ハートの女王
我れらが愛しいアリスがすぐにでも死んでしまわぬよう願っているよ。
茨の魔女
それでは、また、我らは貴方のすぐ近くにいる。
会いたいときに願うと良い。
叶うかもしれぬからな。
 痛い痛い。
 よりひどくなってる気がする……。
 そう言った7人の気配は消えた。

 それと同時に地面にぶつかった。
あなた
あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁぁっ!!!!!
グリム
なんだなんだ!?
どうしたあなた!!
エース
あっはは、ちょっと転けてくらいで大げさすぎっしょ。
 地面に頬があたっているが、気にならない。

 頭が割れるように痛い。荷物なんて放おっぽって頭を押さえる。
 胸が締め付けられているような破裂しそうなほど痛い。
 暑い。体中が暑い。
 脈は早い。心臓の音ですら響いて余計に痛い。
 呼吸が荒い。痛みを少しでも緩和させるために叫ぶ。

 周りから人がよってきている気がする。
 そんなことはどうでもいい。
 誰か助けてくれ。
 痛い。
あなた
はぁっ、はぁっ、はぁっ…
グリム
子分、しっかりするんだゾ!!!
エース
はあ!?こいつマジなやつ!?!?
ちょっ、そこのお前せんせーとか呼んできて!
モブ
お、おう
エース
しっかりしろって!
グリム
〜〜〜〜〜〜!
 そこで、意識はプツンと切れた。






ーエース目線ー
エース
おい、しっかりしろ!
起きろ!
グリム
子分が、子分が〜!!
エース
だいたいお前がオレに喧嘩売るからだろ!?
こいつが転けたの!
グリム
ちげーんだゾ!!
お前が挑発するからなんだゾ!!!!
それより子分死んじまうのか?
 こいつ、モンスターのくせに人間臭いし、あなたはなにがあってこうなったわけ?
 絶対転けただけじゃあそこまで痛がらないでしょ普通!?
エース
おーい、あなた!
かなり早いけど息はしてるから大丈夫っと……。
熱はなし…
学園長
一体何の騒ぎですか!?!?
ってあなたくん!?
エース
あっ、学園長!!
グリム
こいつが転けたと同時に叫びだしたんだゾ!!
学園長
何が起こってるのでしょう……?
わかりませんが、目撃者の二人とも着いてきてください。
保健室に連れていきます!
グリム
あなた……。
エース
はいはいっ
 オレは入学早々、変な奴らとあってしまったらしい。
 そう思いながら、グリムと学園長の後を着いて行く。

 思ってたよりも、学園長は歩くの早くて疲れてきた。
 くっそ、なんでオレこんなことに巻き込まれてんだよっっっっ!
 関わらなきゃよかった……。





学園長
保健室に着きましたよ。
あなたくんを寝かせて、と。
グリム
子分は大丈夫なのか?
エース
死なねーと思うよ?
知らねーけど。
学園長
2人とも、あそこでなにがあったのか教えてもらえませんか?
エース
いや、わかんない。
グリム
全く見てなかったんだゾ。
学園長
え? どういうことですか?
エース
だーかーら、そのまんまだって。
オレとグリムはちょーっとした口喧嘩をしてたから全くあなたの方を見てなかったってわけ。
学園長
そうですか…。
なんだか、ものすごく強大な魔力を感じたので、
コッチに来てみたんですけど、まさか、あなたくんがいるとは思いませんよ。
グリム
強大な魔力?
でも、オレ様はなんにも感じなかったんだゾ。
エース
それに、あなたって魔法使えないんじゃないの?
学園長
…魔法を使えないだけで魔力はあります…。
ただ、それがどんなものかわからないので、寮分けができなかったんです。
エース
闇の鏡がわかんなかったの!?
案外ポンコツなんじゃね?
学園長
こらっ!!
それに彼はいせk…いえ、何でもありません。
グリム
なんなんだゾ?
気になるんだゾ!
エース
オレもオレもー
学園長
本当になんでもありませんから。
しかし、これはなんでしょうか?
昨晩はこんなものなかったはずなのに…。
グリム
朝もなかったんだゾ。
 あなたの着崩して少し見える左の鎖骨の少し下に黒い薔薇のような印があった。
学園長
これは一体?
あなた
んん………?
ー僕視点ー


 目が覚めたら声と、見知らぬ天井が広がっていた。
グリム
子分!!!!!
大丈夫か?
エース
おい、起き上がろうとすんなって!!
じっとしてろ!!!
学園長
あなたくん!!
心配したんですからね!
とにかく無事で何よりです。
あなた
すいま、せん…
 僕は思い出したのだ。今までの繰り返されてきた記憶を。
 そして、今は今までの記憶とは全く違う進み方をしている。


 エース…………グリム…………。
 生きててよかった……。
 守れなくて、ごめん……。

 そう思うと涙が溢れた。
エース
はぁ!? ちょ、なんで?
グリム
どこか痛むのか?
死ぬんじゃねーゾ!!
学園長
いきなりどうしたんですか!?
あなた
い、いえ…感動して…。
学園長
それより、さっき何が起きたのか知りたいのですが…。
話せそうですか?
 話しても良いのだろうか?
 信じてもらえるのだろうか?
 前回は信じてもらえなかった。前々回も。
 今回は信じてもらえるのだろうか?

 そう思うと話したくなくなった。
 少しでも今までとは違う選択をしよう。

 僕は首を振って笑った。
あなた
普通に転んでしまっただけです。
叫んだのは頭が思ってたよりも痛かったから…。
エース
(絶対何か隠してる)
ったくー、人騒がせなやつだよ!
グリム
無事で良かったんだゾ!!
オレ様が退学になっちまう!
あなた
あはは、怪我の心配じゃないのグリムらしいや。
学園長
そうですか……。
まあ、目立った傷はないので、大丈夫ですよ。
それより、あなたくん、今日は放課後、いえ、時間は16時になりました。
忘れずに来てくださいね?
あなた
ああ、学園長室…。
何するんですか?
 走り出そうとベットから降りようとすると、ズキッと足に激痛がはしった。
学園長
まあ、寮長たちとの顔合わせと事情説明などでしょうか。
あと、授業始まりますけど、のんびりしてて大丈夫ですか?
あなた
え!?!?
2人とも本当にごめん…。
走ろ…。

って痛っ!
エース
優しいエース君が待っててあげる。
グリム
オレ様も待つんだゾ。
学園長
心配いりません!
私、とーっても優しいので、瞬間転移魔法(あるのか知りませんby作者)で教室まで送って差し上げます。
たしか、トラッポラくんでしたっけ?
エース
あ、はい。
学園長
君も確か1-Aでしたよね?
エース
”も”ってことはお前らも!?
グリム
そうなんだゾ。
あなた
そうそう。
学園長
なら楽ちんです。
さあ、行きますよ。
 視界が光で包まれた。
 同時に足が浮いた感覚がした。

















ーーーーー

追記:
 グレートセブンの御方の口調などが違ったら本当にごめんなさい…。
 見たことがない作品もあるので、どうにかしていきたいと思います…。
by作者

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