もう一度視界が戻ったら、そこは廊下だった。
僕はそう告げて、できるだけ痛くないようにそっと歩く。
開いてる席は沢山はなかった。
前の方ががら空きで、後ろの方は1席しか開いてなかった。
前の開いている席の隣には、デュースが居た。
デュース、君は一番最後まで僕の隣で守ってくれた…。
今までのことを思い出して。
危なかった、名前を言うところだった…。
前回との記憶がごっちゃにならなければ良いんだけれども…。
とりあえず、座る。
そう言われて外にでる。
僕はエースとデュースの後に着いて行く。
ああ、こうやってもう一度、一緒に歩くのは前回ぶりだ。
前回とは全く違う進み方。
初日から僕たちはナイトレイブンカレッジの生徒として入っている。
雑用係としてじゃない、生徒として。
リドル先輩のオバブロが起きなければ良いんだけど…。
本番はエースがつまみ食いするところからか……。
本当に初めからやり直してるのか…。
食堂ー昼ー
そのまま、施設紹介があった。
そして、昼になり、解散。
僕はこのイベント自体に参加してなかったから、新鮮だ。
今まで繰り返してきた中でもこれは初めてのことだ。
僕は食堂へと向かった。
何気に後ろから、エースとデュースも着いてきてくれてる。
デュースは何となく分かるとして、あのエースが!?
ツンデレか???((
そう言って、デュースは着いてきてくれた。
そういえば、一応、今回はまだ名前が聞けてないんだった。
デュースは自分がいるものとエースのやつを。
エースのは、多分デュースのチョイスでカルボナーラになってる。
デュースは相変わらずオムライスだ。卵料理好きだよな…。
僕は、グリムが前回からずっとお気に入りだったハムカツサンドとツナサンド、
あと、鶏肉のグリルと、まあ、色々を持って戻る。
なぜ、みんながこんなに食べろと要求するのかわからない。
これが当たり前だったのに…。
夜ご飯が食べられれば一日生きていけるのに…。
逆に食べ過ぎじゃないの?
おっと、エースからの圧がすごい…。
どうしたものか…。
それにこんなもの見たことない………って
前回の記憶の中にエースの誕生日のときに見た記憶があるっぽい。
でも、今回の僕はまだ食べてないし、美味しいのかどうかもわからない…。
確かチェリーパイってエースの好物だったはず?
他人からの善意なんて触れたことなんて基本的になかったからな…。
まあ前回の記憶や前々回を除いてだけど。
さあ、どうするか。
未知の味に挑戦するか。
一日二食も食べて大丈夫なのか知らないけど、いいか。
ちょっと、手を震わせながらフォークを手に取り、チェリーパイに突き刺す。
僕は一言そう言ってから、フォークをパイから抜く。
これは手で食べるのが正解なんだろう…きっと。
手で掴む。
そう言って、カルボナーラを口に突っ込んできた。
チェリーパイの少し甘酸っぱいスイーツらしい(?)味から一気にまろやかな味になる。
僕の家か…。
僕は普通と思ってたけれども異常だったみたいだ。
勉学で常にトップにいないとダメ。
トップでなければ、浴びせられるような暴言と暴力、夜ご飯でさえ食べられなかった日もあった…。
しかし、そんなことを話して空気を盛り下げたくはない。
優しい。
出会って一日でこんなにも優しかったっけ?
もっと、煽られてた気がする。
ランチのことも特にキにされてなかった気もする…。
前回は…確か、優しさを感じたのスカラビア寮でのジャミル先輩のオバブロの後、
エースとデュースがわざわざ乗り継いで来てくれたことからだっけ?
前回と進み具合が全然違う。
もしかしたら、リドル先輩のオバブロも先送りにされてるかもしれない。
できるだけ、慎重に行動しなければ。
リドル先輩のオバブロを抑えられればこの先のオバブロを抑えられるかもしれない。
そんなこんなでランチを終えた。
僕は調べ物をする……
という建前で
前回や前々回の記憶が新しく入った頭の中を整理するために、
これから先に起こるオバブロの阻止方法を探るために
図書室に向かうことにした………
はずだった。
図書室ー昼ー
あー、まずい、言い訳を…。
控えめにかつばれないように作り笑いを浮かべる。
もう慣れたもんだ。
二人の方を見ると固まってる。
揃いも揃ってこいつらは何なんだ…。
エースが動揺してるなんて珍しい。
確か、前々回でしかこの慌てっぷりは見てない。
僕はなにかやらかしたのだろうか?
まあ、そんなことは気にせずに、棚に向かう。
まずは、ハーツラビュルで厳格に守られているハートの女王の法律全810条の本。
思っていたよりも分厚かった。流石、810条。
次に、ブロット、オーバーブロット、魔法、魔法石についての本。
ツイステッドワンダーランドでのマナーについての本。
ツイステッドワンダーランドでの常識、小話、言い伝えに関する本。
グレートセブンについてと生前に関する本。
魔法薬学に関する本。
世界の地理や各地域の伝統文化についての本。
などなど…。
とりあえず、約10冊ほど借りた。
そして、図書室の座れる場所(エースたちが場所をとってくれた他の人から見えにくい場所)
に持っていって座る。
ちなみに表紙は見えないようにしている。
席は
デュース|僕|エース
みたいな感じに挟まれてる。
グリムは僕の座っている椅子の下で寝ているみたいだ。
グリムはやっぱり猫なのか?
僕はメモ帳を取り出した。
教科書の中に埋もれてたもので使うと思って持ってきて正解だったみたいだ。
これまでの内容を整理する前に一つ疑問を解決させたい。
あー、そういうことか…。
まあ、半分あってるけど、バレたのならバレたで結末を変えるための協力者に
引き込むつもりだから問題はない。
まあ、静かになったところでメモをちぎってどんどん書いていく。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。