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『雪に願いを』
☆1☆
「…やっぱり……_____________
____________……淋しいな…」
☆2☆
終電の波を抜け、ひとり家路を行く。。。
同僚を誘って、はしご酒って…
俺も、正式なオッサン道を歩いてんなぁ〜
今日は、ひとりにはなりたく無くて…
まぁ そんな俺の心境なんて、同僚は知らんけど。
アパートに近付くにつれ、街灯も少なくなっていき、、、
俺の ひとりだけの足音が、余計に響いていく感覚だ。
_____
〇「この中、、、暖かい!スゴイね!」
と、、、
俺のポケットに、魔法がかかってるかの様に話す君。
その魔法のポケットには、いつも君の左手があった。
_____
冷えて張り詰めた空気が痛くて…
俺は、カラのポケットへ両手を突っ込んだ。
☆3☆
落ちた心。
自然と下がる視線。
交互に見える…
アスファルトを蹴る革靴。。。
前に進めてるのかも分からないくらい…
意識があるのかも分からないくらい…
僕は…
君がいない冬を、どうやり過ごせば良いのか…
大げさじゃなくて、、、
生きてる心地がしないんだ。。。
☆4☆
ポストを覗いて、DM系の紙を鷲掴みする。
確認するのは、君の名前だけ。
誤配送を期待してるなんてな、、、
_____
〇「転勤になったの…」
君が打ち明けたのは、、、
俺たちが、些細な事でケンカしていて、
まだ…仲直りの一歩が踏み出せないでいた時だった。
〇「…いい機会かなって思うの。」
俺は…
仲直りの方法を考えていたのに…
君は…
別れを選んだんだ。。。
_____
どうして別れてしまったのだろう。
ほんの、、、些細なケンカだったのに…
そんなケンカさえも乗り越えて行けるんだと…
思ってたふたりだったのに…
コンッコンッコンッ、、、
深夜の静寂に足音を響かせながら、アパートの外階段を登り始めると…
チラリと、、、雪が舞い降りてきた。
☆5☆
はぁぁぁっっ、、、雪か。…
溜息は白く…
凍りついて、、、消えた。
コートのポケットから鍵を取り出し、顔を上げた時…
ドアに袋が、掛かってる。
なんだアレ??
初めての事に、恐る恐る近寄ってみる。
なんだか大人な雰囲気の小さめの紙袋には、プレゼント用に包装され、綺麗なリボンを掛けられた箱。
それと…
すぐ側にあるコンビニの袋には…
中華まんが2つ。
コレまだ、、、
温かいやんッ!!!
俺は、来た道を引き返し、大通りまで走っていた!
直感でしかない。
君が居るのは、、、あそこや!
頼む!!!
間に合ってくれッ!!!
舞い落ちる雪は、粒の大きさを増していき、、、
走る俺の頬で溶けていった。
☆6☆
たくさん後悔したんだ。
これからの毎日に君がいないこと。
君の誕生日を祝えないこと。
魔法のポケットに君の手が無いこと。
中華まんを2つ買えないこと。
数え切れない後悔の後には必ず…思い知る。
こんなにも、、、
こんなにも、、、
愛しているんだと。。。
濵「〇〇ーーーーーッ!!!」
はっ!っと俺に気付くと、タクシーを止めようとしていた手が降りた。
俺の勢いに、後ずさりする腕を引き寄せ…
君を、、、抱きしめていた。
濵「…アホ……帰ろうとすんなよ…」
「ううっ」て堪えるように泣きながら、そんな冷えた身体で、強く抱きしめ返されたら、、、
もおダメや…愛おしさが…止まらん!!!
☆7☆
〇「だって…怖くなっちゃったんだもん!……もし崇裕が…他の女の子と一緒に帰って来たりしたら…って考えちゃったら、待ってられなかった。…」
〇「そしたら…雪が願いを叶えてくれた!」
俺の胸から顔を上げ涙目で笑う君は、トナカイみたいに赤くなった鼻が可愛らしくて…
濵「俺の願いも、雪が叶えてくれた!」
来年の誕生日も、、、雪だとええな。。。
その夜は、、、
離れていた、ふたりの時間を埋めるかのように…
ふたりの、冷えきった身体を暖め合いながら…
君に伝えた。
“ こんなにも こんなにも ”
“ 愛しています ”
と、、、。
☆ fin. ☆
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!