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第1話

放課後、二人。玲紗side
放課後。


聞き慣れたウェストミンスターのチャイムが、
校内に鳴り響く。


「部活行くぞー」


「待って!あともう三秒!」


「はやくしろよ」


「今日帰りどこよろーか?」


「んぁぁ、タピろ!」


「またぁ?いーけど笑」


部活動に勤しむ生徒や、
タピオカを楽しむ生徒達のお陰で、
あっという間に人がいなくなる。


そんなガランとした教室内に、
ページをめくる音とカリカリ、カリカリ、という
ものを書く音がいやに響いた。


玲紗たまさ


同じクラスには、実は先輩がいる。


今しがた、その先輩──舞乃國芹まいのくにせり先輩からの要請に
読んでいた文庫本にお手製の栞を挟んでから
口を開く。


「はい、なんでしょう?」


担任に頼まれて、
私は芹先輩せりせんぱいの勉強の面倒を見ることになった。


さっきまでのものを書く音は、
芹先輩せりせんぱいが真面目に問題を解いて‥‥‥‥‥いや、
真面目に取り組んでいることの証だ。


「ここはどうやるの?」


芹先輩せりせんぱいは、背が高い人だった。


「見せてください」


それゆえか、頭上からそれとない視線を感じた。


「ここは‥‥‥‥‥‥‥‥」


先輩が示した部分をじぃぃっと見つめる。


何度も問題文を目で追い、
頭の引き出しから
この問いに該当するものを引っ張り出す。


それは、周囲からしたら、ほんの一瞬。


私にとって、数分かかった感覚がしたとしても。


私の脳は、何かを思考するとき、
時間の流れる感覚がとても引き伸ばされた。


物心ついた頃からそれが当たり前だったから、
特に疑問に感じたことも、
違和感を抱いたこともない。


「あ、なるほど。ありがとな。玲紗たまさ


「どういたしまして」


問題の解き方を伝えると、
基本頭の出来のいい先輩はすぐに理解して、
さらさらと整った美しい字で
解答欄を埋めてしまった。


それから、私に礼を言ったのだ。


にこり、と控え目に笑うその様は、まるで王子様。


日本人らしい艶やかな黒髪に、
切れ長でありながら穏やかな目元。


薄い唇には右下の端にほくろがある。


そんないかにもなイケメン留年生。


留年なんてハンデがあるにもかかわらず、
先輩にはファンクラブまで存在している。


しかし、典型的な恋愛漫画のような
「彼と釣り合う女だとでも思ってんのかいじめ」
はなく、非常に品のあるファンクラブ会員達なので
言わずもがな、私はとてもホッとしていた。


‥‥‥‥‥。


話がそれちゃったなぁ。


さて、気を取り直して。


頭の出来のいい先輩が、
なぜ留年するはめになったかと言うと、
話は二年ほど前に遡ってしまうのだ。