無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第11話

父。その2。玲紗side
授業開始のチャイムが鳴って、
先生が私達生徒やその保護者に改めてこの総合的
学習の説明をし始めた。


「それでは皆さん、それぞれの職業について
保護者の方々にいろんな質問をしてみましょう。
質問タイムは30分間です」


その言葉を皮切りに、
生徒達は一斉に各方へ散らばった。


開始五分は何事もなく過ぎていった。


私は弁護士をしているという木村さんに
質問をしていた。


私のクラスに木村という姓は何人かいたけれど、
服のセンスや顔立ち、雰囲気や言動から、
木村琉斗きむらりゅうとのお父さんだろうな、と推測できる。


眠そうなのにきちんとしてるところが、
よく似ていると思う。


ちなみに、木村琉斗はカーストの上の方だ。


私は知らなかったけど、木村がスクールカーストで
上位なのはお父さんの弁護士という職柄があってのことなんだろう。


そんなことをぼんやり考えつつ、
木村さんにいくつかの質問を終えた。


そんな時、だった。


「おい見ろよww」


「え?何々?」


「ほらあそこ」


「あっほんとだww」


「どした?」


「いや、あいつ、親父が楽に金稼いでくれんのに
弁護士に質問してんだぜ??ww」


「まじかよww親父からギャンブルテク教われば
いーのにバッカじゃねーのー??」


「いやまじそれなっ!」


「てか俺らが将来楽できるようにギャンブルテク
教わっておこーぜ!!」


「おおお!ナイスアイデア!!」


「天才かよww」


「それな!」


小暮率いる男子達複数名が固まって、
私のことを指差し嘲り嗤っていた。


「っ………………」


あぁ、しんどい。


まぁ、無視するに限る。


「柏織さん、大丈夫ですか?」


「え?……………」


ふとその声に顔を上げれば、
木村さんが心配そうな顔をしていた。


とてもいい人みたいだ。


「慣れてるし、好きに言わせておいていいです。
……………私に構うと、琉斗君も、その、
対象になっちゃいますよ………?」


「琉斗はそんなやわな子じゃないから大丈夫です。それより君は本当に大………」


大丈夫、と。


木村さんが言いかけた言葉は、
すぐ近くのもっと大きな声に掻き消えてしまった。


「ガキ共っっ!!」


聞きなれたその声に、私は目を見開いた。


「ハァッ…………………」


お父さんだった。


「ひぃっ」


「わっ……」


当人達は父の迫力に気圧されて情けない声を出す。


「貴様ら、よくも俺の娘をっっ」


「キャーーーッッッ!!!」


「ね、ねぇ、やだやだやだっ!」


「怖いっっ………」


「うあーー!!」


「や、止めて!!」


「下ろせ!!」


生徒達が悲鳴をあげる。


お父さんが小暮の胸ぐらを掴みあげて、
今まさに、殴りかかろうとしていた。


「お父………………さん」


周囲のざわめきに、
私の微かな声はさっきみたいに掻き消えてしまう。


代わりに、心臓の拍動がドンクドクンと、
嫌に耳に響いてくる。


皆の動きがスローモーションになる。


私はゆっくりとした鮮やかな混沌を、目の当たりにしていた。


「…………っ」

































父は結局、小暮とその他数人の男子生徒と教職員を殴り怪我を負わせ、警察沙汰となった。


その場に居合わせた木村さんがなぜか、
父の弁護人となった。不思議だった。


学校でもさすがに今回のことは無視ができないようで、事の引き金となった小暮達は先生から事情聴取を受けた。


それによれば、私のことを親の目の前で惨めにさせたかったとかなんとか。


そんなことで、
私と父の人生を黒く染めないでほしかった。


悲しくて仕方ないのに、泣くことができなかった。


父は娘の名誉を傷つけられた事実と子供を躊躇無しに殴ったことで判決がなかなか決まらなかった。


けれど、執行猶予が二年ついた。


判決が下り、父が拘置所から帰ってくるまで、
私は児童養護施設で過ごした。


監視される生活のもと、
父と私は静かに暮らしていた。


それから二年が経とうとした頃。
私が中三の秋。


執行猶予が切れる、一ヶ月前のこと。


勘当され、絶縁状態の父のもとに、
兄夫婦が訪れた。


私からしたら、叔父夫婦だ。


その日から父の様子が変わった。