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第2話

赤い記憶。芹side.
今から、二年前。


季節は春。


俺は二年生に進級した。


自分で言うのもあれだけど、まぁ事実として、ね。


それなりに勉強はできたし、
(学年トップの秀才byあつし)
あと、友達もたくさんいて学校生活が楽しかった。


そんな俺を、親友の敦はこう言うんだ。


「誰もが一度は夢見るような、
順風満帆な高校生」って。


そりゃ、わからないことがないのは楽だし、
友達も多くて楽しかったことは認める。


認めるけれど、
俺はどこか満たされないものがあって、
ふとした瞬間にそれを強く感じることがある。


それがいったいなんなのか。


当時の俺には正体が掴めなかったけれど、
ただ漠然とした、満たされてはいない、
という感覚が確かにあった。


それについて考え出すと、
どうしようもない焦燥に駆られて、
その場にじっとしていられなくなる。


そんなある日のことだ。


その日、母さんの姉家族がうちに来て、
家族会議をしていた。


俺はその日、なかなか寝つけず、
例のごとく家を飛び出して
当てもなく歩き回っていた。


思う存分歩いたところで我に返って、
俺は慌てて家に戻った。


いや、戻ろうとした。


「戻った」という完了形を
「戻ろうとした」と直したのは
「戻れなかった」という結果があるからだ。


無我夢中で歩いていた俺は、
かなり家から離れた場所まで来ていたために、
空を気にする余裕なく走り出した。


やがて自分が住む区域に入り、異変に気づいた。


空が赤い、と。


まだ夜が明けるには早い時間帯だというのに、
空が異様に赤く染まっていた。


「まさか‥‥‥‥‥」


嫌な予感なんて、当たるためにあるもので、それは例に漏れることなく俺にも当てはまる。


「ハァハァ‥‥‥」


一歩一歩、家に近づく度に、明るくなる。


「くっ‥‥‥‥ハァ‥‥ハァ」


家に辿り着く頃には既に、
消防車や野次馬が群がっていた。


17年過ごしてきた家が炎に包まれ、
崩れ燃え行く様はあまりにも強烈で。


度重なる放水を炎は気にも止めず、
ゆらりと伸び上がって酸素を喰らう。


肥大化してゆく。


その中に、見えてしまった。


人の動く影を。


「っ─────離せっ!!離せ離せ離せ!!!
俺を、行かせて!家族のもとへ!まだ生きてる!!
助けなきゃ!俺の家族なんだ!!!離せっ!」


泣き叫んだ。力一杯。声の限り。


どうして。


どうして。


どうして。


まだ俺の母さんと父さんと、
従妹いとこ優香ゆうかとその両親は生きてるんだ。


なら今すぐ助けるべきじゃないのか。


俺の命なんか。


そう思えた瞬間、俺の中で何かが切れた。


押さえつけられてびくともしなかった、
消防士の腕を退かして真っ直ぐ、真っ直ぐ、突き進む。


今、皆を助けるから。


その思いだけで業火の中へ突っ込んだ。


「母さん!!!」


「父さん!!!‥‥‥どこ!?」


「伯父さん!!!伯母さん!!!優香!!!」


「皆!!!どこだ!?」


泣き叫んだ。力一杯。声の限りに。


薄くなる酸素。


舞踊る炎。


崩れる家屋。


「ゴホッゴホッ‥‥‥カハッ‥‥‥ゴホッ‥ゴホッゴホッ」


肺が焼けそうなほどに痛かった。


呼吸する度に喉がヒリヒリして痛くて痛くて。


「に‥‥‥‥芹‥‥にぃ‥‥」


けど、微かなその声に、
俺の痛みなんかへでもないと、
無駄ではないと思えた。


「っ‥‥‥‥優香!!!待ってろ!!!今行くからな!!!」


「芹にぃが助けるからな!!!」