蝋
揚羽は、
店の廊下から、空を見上げる。
揚羽[ハァー]
ため息が出る。
揚羽[もう、春様は行ってしまわれて居るんですね。]
駒[揚羽、今日も客来るが出来るか?]
揚羽[はい、大丈夫ですよ。]
少し、悲しそうに笑う揚羽。
駒[そうか]
夜
客の相手をして、体を洗い自分の部屋に帰ってくる。
静かな部屋
小物箱から、鈴を出す。
目の前が、涙でぼやける。
チリン チリン
揚羽[春様、やっぱり会いたいです。]
声を出さずに!ただただ涙が溢れる。
そのまま、泣きつかれ床で寝てしまう。
次の日の朝、
駒が、揚羽の部屋に入る。
そこには、顔に涙の後が残り。
鈴を握りしめ、床で寝ている揚羽がいた。
駒[こりゃ、重症だな]
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!