前の話
一覧へ
次の話

第10話

記憶
215
2018/03/23 10:58
あなた

お母さん?今日もお見舞い行ってくるね?

お母さん
まだ、寝ぼけてんの?
お母さん
美咲はもうとっくのとうに死んでるの。
あなた

えっ?だって昨日はあんなに元気だったのに…

お母さん
あなた。妹は記憶喪失なんて嘘よ。記憶喪失なのは あなた、あなたなの。
あなた

私が、記憶喪失!?

お母さん
あの日妹はもうトラックに引かれて重体だったのよ。その後病院で亡くなった。
あなた

ぇ…だって、お見舞い行ったよ?

お母さん
それは、あなたが記憶喪失になったからよ。妹が死んだことを受け入れきれて無かったの。
あなた

でも、家族の記憶とか、思い出はあるし…あの事故だってきちんと覚えてる!

どうして?どうして?

記憶喪失は私!?
お母さん
あなたは怖くなって逃げたの。何もかも。だから、記憶も消して書き換えた。
あなた

だから、お母さんとの記憶が違って矛盾していた…

お母さん
そう記憶喪失はあなただったの、
あなた。
-----------------
記憶は塗り替えられることが出来る。
そして嫌な記憶や消したい記憶は、別の記憶にすり替えられる。
忘れられる。


だけれどそれが矛盾を呼び、逃げたくなってしまうことは、たくさんあると思う。
だからこそ、逃げずに真正面からぶつかって受け止めることが、1番大事だと思う。



家族の暖かい記憶は永遠に生き続けること、覚え続けることを願って。

プリ小説オーディオドラマ