前の話
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幼い頃、習いたての空手を見せてくれた彼に対抗して、僕も拳法を習い一週間後にまた見せ合おうと約束をした。しかし、ずっと待っても彼は来なかった。あれ以来突然僕の目の前から居なくなってしまった彼を、漸く見つけ出したかと思えば、居なくなった原因でもある組織によってあの頃の記憶を消されてしまっていた。
それでも僕は、もう一度彼と友達になる事を決め、今度こそ何処にも行かせないと決意した。
彼にとっては、いつもいつも連絡をしてくる鬱陶しい奴だときっと思ってるに違いないけれど、どうかもう少しだけ、僕のエゴに付き合って欲しい。
そして今夜、小さな約束だけれど、来てくれたのが凄く凄く僕は嬉しかったよ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。