壱馬 side
なんで、なんでここにおるん…?
あなたを苦しめに来たんか?
また、あなたが俺たちから離れていったらどうしよ、、
その時、あなたが目を見開いて俺を見た。
まるでなにかにびっくりしているように。
俺に、そんなこと神田さんに聞くなって言わんばかりに。
…違う。絶対違う。
遊びに来ただけじゃないはず。
荷物?
そう思って神田さんの足下を見ると、でかいバッグが置かれていた。
…なんだなんだ…泊まりにでも来たのか?
こいつは一体何がしたいんだ…?
…は?何言ってんだこいつ。
もう、ファンタの分で部屋は埋まったぞ?
マジで何言ってんだこいつ。
あなたがなにかを目で訴えかけてきている。
神田さんが言っているのはそういうことじゃないって。
ちょっとこの人計算できないの?
なんで、9から1引かれるんだよ…
あなたは微かに震えていて、諦めきったような顔をしていた。
…あなたは神田さんのなにを読み取ってるん?
そういうことじゃないって、どういうことなん?
教えてくれ…、、
…は、んだよそれ。
…なに言ってんだよ拓磨、、
あなたを部屋から追い出すってことは、家からも追い出すってことだぞ?
隣にいるあなたを見れば、やっぱりな、みたいな複雑な表情を浮かべている。
あなたがさっき訴えかけてきたことはこれだった?
ばーか、知ってんだよこっちは。
あなたが嘘をつけない人だってこと知ってんだからよ。
またあなたが目を見開いてる。
何言ってんだこいつ、みたいな目で神田さんを見ている。
あなたは、考えてることを行動で示すから頭の中が分かりやすい。
いつも見てるから、俺はあなたのことならなんでも分かる。
みんな、みんなこの女に騙されてる…
早く気付けよ、、
これじゃ、同じことの繰り返しじゃねぇか。
誰もなにもあなたの言葉なんか聞こえてねぇじゃねぇかよ。
もういいよ、みたいな目で俺を見つめるなよ…
俺は、、俺らはただあなたを助けたいだけなんだよ。
絶対そうはならないはず。
…だって、声が震えてるよ?目が潤んでるよ?
そう言って、あなたは階段を上がっていった。
…去り際に微かに聞こえた。
…空耳かもしれない。
「信じてたのに」
「俺の覚悟なんて所詮そんなもん」
この2つの言葉は、一体何を意味してるんだよ、
あなた…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。