慎 side
ヒロさんに聞かなきゃ…
陣さんが、ヒロさんに事情を説明していた。
…あなた、そろそろ帰ってきてもいいんじゃない…?
…え?…
…男…か。
あなたはそいつに連れ去られた、、?
やっぱり、あなたに危険が迫ってることはみんなわかってるのか…
そう言って、陣さんは頭を下げた。
初めて見た。あんな苦しそうな陣さん…
それから俺たちは部屋を出た。
次に、FANTASTICSの楽屋に向かった。
大樹さんと颯太には言わないと…
ごめん颯太。…あなたはいないんだ。
そう言った北人さんの目には、沢山の涙が溜まっていた。
陣さんが説明し終わった後、みんなは泣いていた。
…俺だって泣きたい。
俺たちは、感謝の意味を込めて頭を下げた。
本当に情報が少なすぎる…
こんなんであなたは見つけられる?助けられる?
それで何かが分かったらいいのに…
部屋を出ていく際に、ヒロさんに呼び止められたそう…
その時、颯太と大樹さんの顔が曇った気がした。
…俺の気の所為か。
やっぱあれは気の所為なんかじゃなかったみたい。
確実に、大樹さんと颯太の顔が引きつってる。
まるで、恐怖再来みたいな…?伝わらないか…
大樹さんと颯太がやけに焦っているような感じがしたから声をかけてみた。
2人は放心状態で全く言葉を返そうとしない。
…2人は何か知ってる…?
2人の眉が少し動いた。
やっぱりなにか隠してるんだね…
颯太はその後ハッと驚いたような顔をして、自分の口を塞いだ。
…何を言おうとしたの。あなたがなに?
その後、楽屋には沈黙が流れていた。
誰も一言も喋らず、地面をひたすら見ているだけ。
壱馬さんの、今にも消え入りそうな声ですら皆さんの耳に確実に届いたと思う。
…てか、こうしてる間にもあなたがなにか危険な目にあってるんじゃ…
…あなたが二度と戻らなくなってしまう…
そうだ。2人なら分かるかもしれない。
何か知ってそうな2人ならあなたの居場所が…
大樹さんと颯太がお互いの耳元で話してるから、こっちには会話が聞こえない…
…あなたに聞いてたら教えてもらえたのかな…
…空き家…?
…颯太が言っていることは正しい
あなた、もう少しで助けに行けそうだよ。
待っててね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。