あの日の約束から数日。
真一郎はあれからずっとあなたに抗争に行くな
と、説得し続けている。
そして、気づけばもう決戦前日になっていた。
真一郎はあなたの腕を掴み
そう言ったところで言葉に詰まった。
この話をあなたにするべきではない。
武道から未来の話を聞いた真一郎は
ずっとそう思っていた。
だからこそ、言葉に詰まる。
けど、どうしても行ってほしくない。
そのせいでこんな言葉しか掛けられない自分に
心底腹が立つ。
あなたはニシシッと真一郎を笑いながら見る。
真一郎はその笑顔を見て
あなたの腕を掴んでいた手を無意識に緩めた。
あなたは真一郎に掴まれていた手から抜け出す。
そしてタッタッタッと走って帰ってしまった。
真一郎はあなたの腕を掴んでいた手を見つめる。
そして、その手を力一杯握り締めた。
あなたが去って行った道を見ながら
真一郎は1人、そう呟いていた。
それを、黒い影が見ているなんて知らずに…。
その影は踵を返し、渋谷の街の中に溶け込んだ。
そして、決戦当日。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。