私は翔太くんとタイミングをずらして、高校を中退した。
そして今、私より先に中退してM県にマンションを借りて生活していた翔太くんの元へやって来た。
これから2人で住む予定。
お互い未練なく、一緒に逝けるように準備中。
翔太くんの部屋は綺麗に片付いていて、清潔感があった。
そう言った彼の後ろにはダンボールが山積みになっていた。
翔太くんは少し不安そうに首を傾げる。
少し恥ずかしくて、情けなくて、俯く。
でも嘘ではない、翔太くんが高校にいなかったたったの1週間でさえ、生きる意味を見失っていた。
すると翔太くんから手が伸びてきて、私を優しく撫でてくれた。
気づいたら抱きしめられていた。
初めて感じた人の温もりを、私は忘れることは無いだろう。
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私にとっての新居で取っている、ぎこちない昼食はダンボールに座って。
ふとそんなことが気になった。
彼の言葉にホッと胸を撫で下ろす。
なんだかんだいって、楽しみ。
こんな人生になるはずじゃなかったのになぁ。
でも私は、夜雨くんのためにも長く生きなきゃ、そう思っているから。
彼ができなかったことも、してあげたい。
心ではそう思っている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!