@翔太side
そう、今日は旅行に行く。
最期の旅行。
今まで僕が行きたかった場所。
この日のために色々、努力したんだからな?
喜んでくれるといいな。
淡い期待を胸に、俺は彼女の寝ている横顔を見つめた。
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電車をおりると、暖かい日差しが体に当たる。
なんで電車?ここは…どこ?
「どうだ」と言わんばかりの自慢気な顔で翔太くんがそう言う。
ほ、ほう。。
一瞬だが、私は見た。
彼の目に光が戻った瞬間を。
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@まふゆside
彼は少し変わったヤツだ。
清々しい彼の姿を見たら、私までスッキリした。
また新しい気持ち、感情を知れた。
ニヤリと笑う彼に少し不安を抱きながら、私達は自然と手を繋いで進んだ。
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翔太くんは、子供のような幼い声が聞こえた。
顔を傾けよく見ると彼は素敵な袴を着ていた。何故?
さらに私の頭は少し重い。何故?
少し記憶が飛んだのか?ここに来た記憶はない。
「完成でございます。どうぞお鏡を。」
関西訛りの強いお姉さんにそう言われ鏡を見ると…
見たことも無い自分がいた。
髪を編み込んで後ろでくくられ、飾りにお花が咲いていた。
顔もキラキラしてる…メイクの力…すごい。
そして私の着る赤色の着物。
この色は、私の好きな色だ。
「彼氏はん、もっと褒めたってや〜。」
私達がカップルに見えなくもないという事実に少し恥ずかしさが残るが、笑みが零れた。
このいじりが、好きで好きで仕方なくなっていた。
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生暖かい風と、眩しい陽の光。
人の声と、首のムズムズ感。
歴史的建造物を見たのは、修学旅行以来。
2度目でもやはり、圧倒された。
和の雰囲気。
何故かゆっくりと流れているように感じる時間。
古人の人も、ここを歩いていたと思うと、時をまたいで共有しているようで。
目に見える神秘性と、目に見えない神秘性が入り交じっている。
赤を基調として、黒でしめる。
彼より少し遅く歩いて、背中を見て見たりする。
翔太くんが自分の服の裾をクイッとつまむ。
言われてみれば、さっきからやたらと外国人観光客の方たちに話しかけられるし、写真まで頼まれた。
母国とは違った文化で「物語に入ったみたい」なんて思うんだろうな。
確かに、昔の話だったはずのものが目の前にあることの素敵さといったらそりゃもう_
気づいたら彼は手にくしに刺さった団子をふたつ持っていた。
ここは。甘えちゃお…
カップルみたい。我ながら思う。
この団子なら永遠と食える気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。