翔太くんが連れてきてくれた場所は誰もいない裏山。
空には孤独なまん丸の月と星が散りばめられていた。
彼はここにいるんだって。
機械のように調子がない声でそういう彼が立ち止まった目の前には、横たわった何かが確認できた。
スマホのライトでそれを照らす。
思わず口を抑えた。
気を使ってたまに私に優しく話しかけてくれていた、笑顔が似合う素敵な男の子_夜雨くんだった。
寝ているかのように、長いまつ毛を下に下ろし、少し焼けた肌を晒している。
ますます人が信じられなくなった。
優しいと感じていた彼が、グループの一員だったなんて見損なった。
私はゆっくり頷いた。
夜雨くんから微かに臭う香水の匂いが鼻をくすぐる。
そう言うと翔太くんは、手で穴を掘り始めた。
私は持っていた色とりどりのお花をちぎり始めた。
お花には悪い。
生命を殺してるのと一緒だから。
お花さん、ごめんなさい。
でも夜雨くんがゆっくり眠れるように。
少し手伝って。
夜雨くん。ごめんなさい。
その言葉に私は頷いた。
翔太くんの足元には浅い穴ができていた。
私と翔太くんは夜雨くんを穴に入れた。
そう言うと彼はしゃがんで黙祷を捧げた。
もちろん私も一緒に。
月明かりに照らされた、夜雨くんの肌は透けていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。