第9話

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2019/07/27 09:21
ライブハウスを出た。

外は小雨が降っていた。
まだ昼間のはずなのに、あたりはどんより暗かった。



「まだあの2人は付き合ってないの。
今は翔太郎の片思いだけど
もうすぐ両思いってとこかな」

俯いたまま彼女は話し続けた。
僕は何も言えなかった。


「…ねぇ、徹くんも分かったでしょ?
私、桜とは違うの。桜にはなれないの。」



頬に雫が流れていた。
彼女はそれを拭いもせず、自嘲気味に笑った。


「最初に翔太郎が桜を好きって気づいた時は桜に
見た目を寄せてみたり…足掻いたんだけどね。」

確かに、桜さんは可愛い系…という感じで、
丸くて大きい目、栗色のふわふわした髪。

…だけど。

「…でも萩野は綺麗だよ。
萩野は、萩野だから。」

萩野は驚いたように目を見開いた。
その表情まで、美しかった。


「…ありがとう。
徹くんって顔フツーだけど優しいね。」

「だから顔フツーは余計だってば。」

悪戯っぽく、彼女は笑った。

「なんかあったらまた頼んでもいい?」

「おう、無理すんなよ。」



気づけば、雨は止んでいた。

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