「ねぇママ!」
「何〜?」
誰かさんにそっくりな瞳が、
僕と美希を交互に見つめる。
「なんでママはこんなに綺麗なのに、
顔ふつーなパパと結婚したの???」
隣で遠藤美希は肩を揺らし、涙目で爆笑していた。
対照的に傷つく僕。
「顔ふつーって…酷くない?」
高校生の頃の美希と同じこと言ってる。
2人が似ているのか、
僕が "ふつーの顔" すぎるのか…。
「美希、笑いすぎだろ」
「だって…面白すぎる…!!」
「ねーなんでー?」
「それはね…」
…気になる。
「内緒!!」
「「えー」」
明らかに残念がった2人の声が重なる。
こう言うところは僕に似てる。
「ねぇ徹くん。」
「ん?」
「愛してる!!」
「…僕もだよ。愛してる」
「行ってらっしゃーーーい!!」
「行ってきます」
2人が見送ってくれると、自然と笑みがこぼれる。
結婚して、子供も生まれた。
見た目は美希よりで可愛らしい女の子。
中身が面倒くさがりなのは残念ながら僕似かな。
綺麗な奥さんと、可愛い娘が家で待ってる。
だから僕は今日も働く。
幸せなあの家に帰るために。
嘘で始まった恋、
嘘つきだった僕ら。
でも、本当に好き同士になって。
…僕の方が愛してるけどね。
なんて、心の中で呟いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!