第12話

さよなら
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2019/08/18 11:08
「あ、美希さん!」

事情を知らない桜さんがこっちに向かって手を振る。


彼の顔が少しこわばった。


「萩野、行こう」

「徹くん、どうしよう…」

萩野は小さなパニックを起こしていた。
まさか会うとは思っていなかったのだろう。



「大丈夫。 大丈夫だから、僕を信じて」

そう言って萩野に手を差し伸べる。

少し迷いを浮かべながらも萩野は僕の手をとった。




「桜、翔太郎ショウタロウ、久しぶり」

「…久しぶり、美希。そちらは?」

「遠藤徹です。 萩野と付き合ってます」

しっかりと彼を見つめながら言った。


微妙な沈黙。

「美希、俺のことなんか言ってます?
性格悪い〜とか、言ってないですか?」

場を和ませようとしているのだろうが、
ヘラヘラ笑いながらこんなことを言う彼に
どうしようもなく嫌悪感が出た。

「そんなこと言ってな…!」

辛そうに反論しようとする萩野を抑える。



「萩野は、あなたの事を
悪く言ったことなんてありません。」

「彼女は優しくてまっすぐな人です。
そんな事もわからないんですか…?」
きっと彼は萩野の優しさに甘えていたのだろう。




「美希、ごめん…」

俯く彼。
素直な様子から本当はいい人なんだろう、と感じた。


萩野は小さく深呼吸すると、
瞳をしっかり開き彼を見ながら言った。


「ごめんなんて言わないで。
今までありがとう。桜をちゃんと幸せにしてね?」

「…うん」



安心したように、彼女は小さく微笑んだ。

「さよなら。」

そう言うと萩野は踵を返し、
藤色のスカートを揺らしながら去っていった。

その姿はとても凛々しく、美しかった。

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